「定年後はハワイ旅行!」と夢みたが…年金月38万円の〈60代夫婦〉悠々自適な老後が崩壊、「年1回の国内旅行も無理」と落胆のワケ
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月1日 7時15分
学校を卒業して以来、40年あまり、必死に働いてきて迎える定年。そのあとも働くか、働かないかは人それぞれですが、一旦はゆっくりしたいなどと、思いを馳せている人は多いのではないでしょうか。しかし、そんな夢も叶うことなく、幻のように消えてしまうケースも。みていきましょう。
二人とも定年を迎えたら…思い描いていた夫婦の夢を断念した理由
記録的な円高により、大型連休を利用して海外旅行に行っている人は大打撃といったところですが、「そもそもハワイ旅行なんて夢物語だし」と吐き捨てるように語る、65歳女性。夫は1つ上の66歳。夫婦で雇用延長をしながら、いまも現役で働き続けているといいます。
――夫の勤める会社は雇用の上限が70歳なので、あと4年ほどで完全引退。私の勤める会社は上限はないので……働けるうちは働き続けたい
月収は夫婦で月45万円ほど。年金は夫婦で月38万円ほど。「経済的には正直余裕がある」と女性。それにも関わらず「ハワイ旅行は夢物語」と語るのはなぜなのか……それは88歳になる、同居の義母の存在があるといいます。
――二人とも60歳で定年だった。ふたりとも定年を迎えたら、ゆっくりしよう、ハワイとか南の国にでも旅行しようと言っていたが
定年の直前となり、当時、まだ存命だった義父が要介護&在宅介護に。とても「定年後は海外旅行に」といった雰囲気ではなくなり断念したといいます。義父は2年前に亡くなりましたが、その後、義母が要介護1の認定。一緒に海外旅行に行くにはハードルが高くなり、また義母を置いて旅行など行ったら親戚中から批判を浴びると遠出は断念。「年1回くらい国内旅行にでも……」と考えたこともありますが、コロナ禍で外出自体を控えていたら億劫に。「もう羽を伸ばすというのは、気持ち的にも無理ですね」と肩を落とします。
国立社会保障・人口問題研究所が先日公表した『第7回全国家庭動向調査 報告書』によると、妻の年齢が 70歳未満となる世帯を対象として、親と同居している世帯の割合は15.6%。また夫、または妻の母親と同居している割合は13.3%でした。
5年ごとに行われている同調査。親との同居割合の推移をみていくと、「2008年」に26.6%、「2013年」に31.5%、「2018年」に19.8%、「2022年」に15.6%。近年、低下傾向にあるものの、親と同居する世帯はは7世帯に1世帯程度となっています。
また年齢別に親との同居割合をみていくと、「20代以下」で7.9%、「30代」で9.3%、「40代」で14.4%、「50代」で18.4%、「60代」で20.5%と、年齢が上がるにつれて親との同居割合は増えていくことが分かります。
「親の介護」の現実…自分の親だろうと相手の親だろうと、妻に負担はかかりがち
年齢とともに親との同居率が増加……その背景にあるのは「親の介護」です。
介護が必要なケースは、「妻の父親」で6.8%、「妻の母親」で13.7%、「夫の父親」で 4.8%、「夫の母親」で11.2%。いずれの場合も、父親より母親のほうが介護の必要なケースが多くなってなっているのは、男性と女性の平均寿命の差から考えれば当然の結果だといえるでしょう。
さらに主な介護者についてみていきましょう。
●「妻の父親」においては「妻の母親」が最多で33.2%。続いて「妻」が21.4%。
●「妻の母親」においては「妻のきょうだい」が最多で31.2%。続いて「妻」が27.6%。
●「夫の父親」においては「夫の母親」が最多で33.2%。続いて「夫のきょうだい」で19.5%。
●「夫の母親」においては「夫のきょうだい」が最多で22.5%。続いて「夫」が16.3%。
どの親の介護でも、男性よりも女性のほうが介護負担が重い傾向にありますが、「妻が夫の母親の主な介護者」になる割合は13.2%に対し、「夫が妻の母親の主な介護者」になる割合は2.6%。相手の母親の介護においても「妻」に介護負担がかかる傾向にあることが分かります。
介護者としての妻について焦点をあてていくと、60代の妻で「(家族の)介護経験あり」は50.2%。「現にいま介護している」は全体の15.3%でした。また現在、介護をしている妻のうち、中心となって介護をしている妻の割合は、「20代以下」で60.0%、「30代」で47.1%、「40代」で44.4%、「50代」で54.1%、「60代」で69.3%、「70代」で91.8%。介護において、妻への依存度が高いことが分かります。
さらに介護経験のある60歳未満の妻において、介護にかかわり始める直前に「仕事をしていた」と回答したのは77.3%。そのうち6.2%が「介護のために離職」と回答。「介護以外の理由でやめた」と合わせると、介護に携わる直後に3割強が退職の選択をしています。
冒頭の女性の場合、親の介護負担は半々で、義母も自分でできることは自分でしたいという気持ちが強いためそれほど大きな介護負担はないといいます。
――いま、心配なのは「老老介護」。いつまで義母の介護が続くか分からない。そうなると、最後に頼れるのは「お金」だけ。定年前に抱いた夢は諦めた分、お金の心配はしたくない
定年を迎えたらハワイ旅行……そんな夢はいまや遠い昔話。義母の介護が終わったら施設にでも入って悠々自適な生活を送るというのが、今の夢だといいます。新たな夢の実現のためにも、働けるうちは働くのだといいます。
[参考資料]
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