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実は、ずっと離婚したくって…金融資産3,800万円・62歳“おしどり夫婦”の妻が、虎視眈々と「熟年離婚」を狙っていたワケ【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月11日 11時15分

実は、ずっと離婚したくって…金融資産3,800万円・62歳“おしどり夫婦”の妻が、虎視眈々と「熟年離婚」を狙っていたワケ【FPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

厚生労働省の「人口動態統計(2022年)」によると、同居期間が20年以上の夫婦による「熟年離婚」の割合は23.5%にのぼり、1947年以降過去最高となっています。この背景のひとつとして「老後資産への不安」が挙げられるそうです。具体的な相談事例をもとに、離婚時の「年金」のしくみと、家計収支の可視化の重要性をみていきましょう。ゆめプランニング代表の大竹麻佐子CFPが解説します。

私、実は…資産3,800万円、定年を迎えたおしどり夫婦の「意外な本音」

「夫と知り合ったのは、大学時代に所属していたサークルでした。学部は別だったんですけど、同じ学年で。当時は、痩せていたし、すごく格好よかったのよ?笑

結婚して40年近く、真面目なところは変わらないけど、ネガティブ思考が気に入らないの。定年退職してからは一段と内向きになってしまって、一緒にいると気が滅入ってしまうんです。

なんであんなにネガティブなのかわからなくって……派手な生活をするつもりはないけど、人生100年時代っていうでしょう? 私は『もっと人生を楽しまなくっちゃ』って思うんだけれど」

ファイナンシャルプランナーである筆者は、定年を迎えた夫婦からのご相談を多く受けます。これまで当たり前だった給与収入から年金生活への移行は生活イメージが湧きづらく、同時に「金融資産が枯渇してしまうのでは」と不安に感じる人も多いのが現状です。

「これからの生活」について相談したいという専業主婦のA子さん(62歳)の相談内容は、思いがけないものでした。A子さんやご家族の基本情報については、以下のとおりです。

<基本情報>

・夫(62歳)……60歳で定年退職後、現在は継続雇用で嘱託として週4日勤務。

収入:手取り30万円/月額、賞与あり

自宅:持ち家。住宅ローンは退職金を使って完済済み

金融資産:3,800万円

・長男(35歳)……大学を卒業後、就職して独立(転勤のため、現在は地方在住)

「それでね、実は私、ずっと離婚したいと思っていたんです。子育ても終わったし、これからは自由に生きてもいいんじゃないかと思って。熟年離婚する人も増えているみたいだし、いいかなあって。

知り合いに聞いたり、調べたりしたんだけれど、家とか退職金とかの金融資産っていうのは、夫の名義でも『共同の財産』ってことになるんですよね? だからそれで、半分は受け取れるわよね。年金についてはほっとこうと思うんだけど」

A子さんが「年金には触れない」と決めた理由

夫とのなれ初めをにこやかに語っていたA子さんからの思わぬ発言に驚きつつも、FPが「そうなんですね。おっしゃるとおり、不動産や退職金は財産分与の対象となります。年金分割の請求もできますが、どうしてされないのですか?」と聞き返すと、

「実は私、年金っていくらもらえるのかなあと思って、年金事務所に相談に行ってきたんです。そうしたら、職員さんいわく、どうやら私のほうが多いらしくて……。離婚して年金分割するなら、夫からもらうんじゃなくて、私が渡さなくちゃいけないみたいなの。だから、年金については触れないでおこうと思って」

大学卒業後、50代半ばまで看護師として勤務していたA子さん。夜勤などもあり、年金額を算出するための基礎となる標準報酬が高かったため、平均標準報酬月額が夫を上回ったようです。

「びっくりしたわよ〜! なんだかんだ夫とコミュニケーションはとっているし、周りからは『いつも仲良しね』なんて言われていたんだけれど、お金についてちゃんと話し合ったことはなかったの」

離婚時には「年金」も分割できる

厚生労働省の「人口動態統計月報年計(令和5年)」によると、離婚件数は全体として減少傾向にあるものの、同居期間別にみると、5年未満もしくは30年以上で増加しています。「熟年離婚」という言葉も、最近では当たり前に聞くようになりました。

熟年離婚の増加とともに「年金分割」についての認知度も高くなっている印象です。ただし、言葉は知っていても、内容までは理解していないという人が多いのではないでしょうか? また、年金分割については誤解が多いのも事実です。

離婚にあたって、婚姻期間中に共同で形成した財産のうち、将来受け取る老齢厚生年金の受給権を分割の対象とすることを「年金分割」といいます。

この年金分割には、話し合いにより分割する「合意分割」と、夫婦の一方が国民年金の第3号被保険者であった期間中の相手方の厚生年金記録を2分の1ずつ分割する「3号分割」の2つの方法があります。

いずれも「多いほうから少ないほうへ受給権を移行させる」ことで、それぞれの年金受給額に不公平が生じないよう配慮がなされる制度です。よって必ずしも、夫から妻へ受給権が分割・移行されるわけではないため注意しましょう。

熟年離婚の原因となる「夫婦仲」以外の"意外な原因“

今回の事例のような、“老後生活を楽しみたい妻と今後の生活に不安を抱える夫”など、定年後の夫婦間の不協和音は珍しいことではありません。原因は、お互いに対する理解不足にあります。ちょっとしたすれ違いが積み重なることで、修復が難しくなるのでしょう。

また、将来をイメージしづらい社会環境も原因のひとつかもしれません。

社会保険や税金は、それぞれの働き方や家族構成等に応じて負担の度合いを調整する制度設計がなされているため、改正が繰り返され、複雑化しているのが現状です。結果として「私の場合はいくら差し引かれるのか」「いくら受け取れるのか」がわかりづらく、不安に陥りがちです。

将来が不安であるがゆえに、「なにかあったときのために退職金に手をつけられない」という人は多く存在します。金融資産残高は十分あるにもかかわらず、生活が苦しいという人も意外と多いようです。

家計収支の「見える化」が老後不安を解消する

定年後のライフプランを考えるための有効な手段として、資金シミュレーションを行うことをおすすめしています。収入や支出、金融資産残高をもとに100歳までのお金の流れを「見える化」します。

シミュレーションを行うことで、制度改正や物価上昇率などの不確定要素を考慮しつつも、「100歳時点でどのくらいの資産が残るのか」あるいは「どこかの時点で枯渇するのか」といった大まかな方向性を可視化するのです。

「使うお金」「残すべきお金」「増やす(運用に回せる)お金」と分類し、把握することで安心につながります。

後日談…Aさんが離婚を見送ったワケ

筆者はA子さんに「離婚をするにしても、まずは現在の家計や資産状況を『見える化』したうえで、経済的基盤を確保する必要があります」と伝え、A子さん夫婦の資金シミュレーションを行いました。

その結果、思っていたよりも経済的な余裕があることに安堵したA子さん。

「夫にもこの結果を伝え、改めて考えてみます」

と言い、その日は帰られました。

そして後日、A子さんから連絡がありました。

「帰ってシミュレーションの結果を見せたらね、あれから夫の元気が戻ってきたんです。『これなら毎年温泉旅行ができるかもな。退職したら、日本中の温泉を巡ることが夢だったんだ』ですって。あのときは離婚したいって言いましたけど、もう少し様子をみてみようかと思います」

そういって、困ったように笑うA子さんでした。

大竹 麻佐子 ゆめプランニング 代表 ファイナンシャルプランナー(CFP🄬) 相続診断士

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