想像以上に面白い!EVのF1とも呼ばれる「フォーミュラE」は近い将来の量産EVを見据えた戦いでもあるのかもしれない
&GP / 2024年4月15日 21時0分
想像以上に面白い!EVのF1とも呼ばれる「フォーミュラE」は近い将来の量産EVを見据えた戦いでもあるのかもしれない
EVのF1などとも呼ばれる「フォーミュラE」。大手自動車メーカーが参加し、世界中を転戦するシリーズです。2024年3月30日に、初めて東京で2023-24年シーズン10の第5戦が開催され、“思っていた以上にエキサイティング!”と評判でした。
■結果は…
さきに結果をお伝えすると、10位までの順位は下記のようになります。
1位ギュンター(マセラティMSGレーシング)
2位ローランド(日産フォーミュラEチーム)
3位デニス(アンドレッティ・フォーミュラE)
4位ダ・コスタ(TAGホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム)
5位ウェーレイン(TAGホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム)
6位ナト(アンドレッティ・フォーミュラE)
7位ミュラー(ABTクプラ・フォーミュラEチーム)
8位キャシディ(ジャガーTCSレーシング)
9位フラインス(エンビジョンレーシング)
10位カマラ(ERTフォーミュラEチーム)
■フォーミュラーEの面白さとは
レース展開は、もうご存知のかたもいるでしょうが、序盤からマセラティのギュンターと、日産のローランドの一騎打ちの様相でした。本来、フォーミュラEではけっこう順位が入れ替わるのですが、東京ビッグサイト周辺の特設コースは幅が狭めで、追い抜くのもひと苦労。
スタート時にポールポジションだったローランドと、3位でスタートしたギュンターが35周のレースを通して、激しいつば競り合いを見せてくれました。
「フォーミュラEってホントに面白いの?」って思う人もいるようですが、エンジン車よりはるかにするどい加速力を持つだけに、ちょっと異次元のレースを観ている気分になります。ドライバーの動態視力はすごいんだなと、感心しました。
フォーミュラEのもうひとつの面白さは、年間16戦のうち、そのシーズンの勝者がなかなか見えにくいところです。F1だとやたら速いマシンとか、うまいドライバーがいると(往年のシューマッハや、最近のフェルスタッペン)序盤からシーズンの勝者が決まってしまうようなところがあります。フォーミュラEではそこも違って、レースを追っていく楽しみが設けられています。
どういうことかというと、マシンのイコールコンディションがかなり徹底しているからです。シャシー、ボディ、フロントサスペンション、回生用のフロントモーター、フロントブレーキ、バッテリーといったものは共用です。
そのため差が出にくくなっています。各チームにまかされているのは、インバーター、モーター、コンピュータのソフトウェアの制御、ギアボックス、リアサスペンションといったものです。それが、微妙な差を生み、抜きつ抜かれつのレース展開を生み出します。
実際、東京まで5戦が終わった段階で、2回続けて1位をとったチームはありません。ドライバーも同様です。東京でいうと、マセラティMSGレーシングの勝利は、多くの人の予想を裏切りました。が、マセラティコルセの責任者であるジョバンニ・トンマーゾ・スグロ氏は、(成績こそぱっとしませんでしたが)第4戦のサンパウロが終わった時点で、「マシンの調子がいい。東京は期待していてほしい」と関係者に語っていたそうです。
私が今回、近くでいっしょにレースを観ていたのはジャガーTCSレーシング。第4戦のサンパウロEP(グランプリならぬイープリという)までドライバー選手権ポイント1位のニック・キャシディと、3位のミッチ・エバンスという戦闘力のすばぬけて高いドライバーも抱えています。
東京でも、ふたり、準々決勝と準決勝、いいタイムを出しました。ところが、規則違反と、他車の走行妨害というペナルティをとられて、スタート順位がうんと下がってしまいました。それでもキャシディは8位に入賞。エバンスはちょっと残念な15位でした。
結果、ジャガーはチームランキングで1位をキープ。ドライバーのランキングでは、エバンスが、ポルシェのパスカル・ウェーレインに次いで2ポイント差と僅差の2位です。
■近い将来の量産EVと関係が深い「レース・トゥ・ロード」
もうひとつ、フォーミュラEが興味深いのは、近い将来の量産EVと関連づけている自動車メーカーが少なくないことです。代表的なのがジャガーです。フォーミュラEにおいて今シーズン、チームの獲得ポイント最多のジャガーTCSレーシングのプリンシバル(責任者)のジェイムズ・バークリー氏は、ジャガーの新世代EVの開発にもかかわっています。
「フォーミュラEのマシンのインバーターに採用したWolfspeedのシリコンカーバイド半導体がいい例です」と、バークリー氏は、レースの合間のインタビューで答えてくれました。電力の損失を抑えられるため航続距離が伸びるなど、このあとジャガー(とランドローバーとレンジローバー)の量産車にも搭載していく予定だそうです。
ジャガーはこのようなレースと量産車の関係が深いことを「レース・トゥ・ロード」あるいは「ロード・トゥ・レース」と表現します。「世界最高かつ最も競争力のある白熱したレースを展開しながら、電気自動車のテクノロジーの限界を継続的に引き上げたいという熱い思いを持っています」とは。前出のバークリー氏の言葉です。
2025年に発表が予定されているジャガーの新EVは、「いままで見たこともないような斬新なスタイルで、狙う市場もいままでよりずっと上」と、ジャガー・トランスフォーメーション・ディレクターのサミュエル・ゴールドスミス氏は言います。
今回のフォーミュラEで、マセラティをどうしても抜き去ることが出来なかった日産。理由として、効率とエネルギー密度がいまひとつ追いつけなかった、と言われています。これを上げていくことが、日産のEVの性能アップにもつながっていくはず。
フォーミュラEマシンにおいて、いまは統一規格が義務づけられている駆動用バッテリーも同様。自由化されたら、さらに量産車の性能向上に寄与するかもしれません。こんなふうに未来のEVとの関係を探ってみるのも、フォーミュラEのおもしろさでしょう。
<文/小川フミオ>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
【関連記事】
◆'24年3月には東京で開催決定!電気自動車のF1レース「フォーミュラE」の楽しみ方
◆「ジャパンモビリティショー2023」は電気自動車のオンパレード!海外勢と日本勢その動向は
◆ドイツで行われた「IAA」は電気自動車のオンパレード! 注目したいVW、BMW、ミニ、メルセデス、ルノーのこれから
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
【ミサノE-Prix】最終ラップのドラマ、ヴェーレインが勝利!…フォーミュラE 第7戦
レスポンス / 2024年4月15日 15時25分
-
【ミサノE-Prix】ダ・コスタ失格、ローランドが繰り上げ優勝…フォーミュラE 第6戦
レスポンス / 2024年4月15日 14時30分
-
日産フォーミュラE、ホームレース東京で2位表彰台 みんなの声援が選手のエネルギーに変わる『VOICE CHARGE』ダイジェストムービー公開
PR TIMES / 2024年4月12日 12時45分
-
フォーミュラE「裏側から観た」東京大会の意気 チームはこの「東京E-Prix」をどう見たか?
東洋経済オンライン / 2024年4月5日 12時0分
-
ジャガーTCSレーシング、東京E-Prixでチームランキング首位キープ…フォーミュラE
レスポンス / 2024年4月2日 17時30分
ランキング
-
1イオンモールで販売「シフォンケーキ」にカビ発生、5000個回収へ “下痢”の報告で調査中……出店企業が謝罪
ねとらぼ / 2024年5月1日 19時45分
-
2「おむつ交換台」から子ども転落 頭部骨折のケースも 国民生活センターが注意喚起
オトナンサー / 2024年5月1日 20時50分
-
35万8000人の移住希望者が選ぶ「移住したい都道府県」ランキング! 2位「鹿児島県」、1位は?
オールアバウト / 2024年5月1日 20時35分
-
4値上げ広がる中、ドンキが“マジの値下げ”。斬新な内容と、唯一の弱点をレポ
女子SPA! / 2024年5月1日 8時45分
-
5“キッチンペーパーのしまい方”で悩んでいた私。最終的に「無印が正解」と確信したワケ
女子SPA! / 2024年5月1日 15時46分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください