4児の母、紺野あさ美さんが出産のたびに提供する「さい帯血」とは?赤ちゃんと母親をつなぐ「さい帯血」が白血病の患者らを救う 不足する「さい帯血」…今後の課題
北海道放送 / 2024年8月28日 19時36分
赤ちゃんとお母さんをつなぐへその緒を流れる、「さい帯血」。病気で苦しむ人を救う力があります。
しかし、その数は目標に達していません。さい帯血がつなぐ、命のバトンに注目です。
タレント 紺野あさ美さん(37)
「退院の日だけちょっとおめかしして」
元モーニング娘。でタレントの、紺野あさ美(こんの・あさみ)さん。
見つめているのは、産まれたばかりの愛娘です。
4児の母となった紺野さんは、出産のたびにあるドナーになっています。「さい帯血」です。
タレント 紺野あさ美さん
「実際自分が子育てを始めたり、妊娠出産という機会があると、いろんな病気や事故が他人事に思えなくなってきた」
赤ちゃんの誕生から、病気で闘う人たちの治療へとつながる命のバトン。しかし、いま、その数が足りていません。
札幌市内の病院で行われた、帝王切開による出産の様子です。
へその緒に針を刺し、胎盤から流れてくる「さい帯血」を集めます。
「さい帯血」には、「造血幹細胞」がたくさん入っています。
赤血球や白血球、血小板の元となり、白血病などの患者のからだに移植することで正常な細胞をつくる効果が確認されています。
白血病などの治療には「骨髄移植」が知られていますが、全身麻酔や数日の入院が必要になるなど、ドナーのからだに負担がかかるのが課題です。
北海道ブロック血液センター 成田玲子細胞治療認定管理師
「さい帯血は出産の際に採取するから、赤ちゃんやお母さんに一切痛みはない。本来、出産後には捨てられてしまうものだから、そこを活用して誰か患者さんの命を救うことができるのは最大の利点」
7月、4児の母となったタレントの紺野あさ美さんも、出産のたびにさい帯血を提供してきました。
タレント 紺野あさ美さん(37)
「赤ちゃんを守ってくれた胎盤が、さらに誰かの役に立つかもしれないと思うとすごくうれしいと思うから、提供した側もこういう温かい気持ちになるよということは伝えたい」
札幌市豊平区にある、産婦人科です。
福住産科婦人科クリニック 保坂昌芳医師
「白血病になった人が身近で3人くらいいたので協力できたらなと」
このクリニックでは、妊娠28週を迎えたお母さんに対し、助産師が「さい帯血」移植について説明しています。
2023年、460人ほどが出産し、その半数がドナーになりました。
福住産科婦人科クリニック 保坂昌芳医師
「(胎盤が)はがれちゃうともうとれないからそれまでの間、5分10分くらい、母数が増えれば血液がとれる確率も高くなるので(ドナーが)増えたらいい」
北海道内で採取されたさい帯血は、血液を処理し保管するバンクの1つ「北海道ブロック血液センター」に集められます。
公式な「さい帯血バンク」は、現在日本にわずか6か所。
北海道内でさい帯血を採取できる施設は、札幌市と石狩市、旭川市の14か所です。
採取したさい帯血は、36時間以内に処理をし凍らせる必要があります。
安全な形で患者に届けるため、すべてのさい帯血が採用されるわけではありません。
重さは、このパックで110グラム以上あることが条件です。
北海道ブロック血液センター 内藤友紀薬剤師
「4割くらいのさい帯血がここの重量のところで残念ながら廃棄」
次は、さい帯血に含まれる細胞数が充分であるか、くりかえし確認します。
北海道ブロック血液センター 内藤友紀薬剤師
「(この工程までで)全体の2割程度になる」
無菌室で細胞の膜を守る保護液を入れるなどし、液体窒素の中で保管されます。保管期間は10年間。
このセンターからは、年間120程度の「さい帯血」が全国各地の患者に届けられます。
国内で行われている造血幹細胞移植は、近年骨髄よりさい帯血による数が上回っています。
しかし、いま保管されている「さい帯血」の数は、最低目標の1万件に届いていません。
北海道オホーツク地方の訓子府町で酪農を営む、安岡祐一(やすおか・ゆういち)さんです。
さい帯血移植を経験 安岡祐一さん
「最終的には家に戻って、牛の仕事をするのが入院中の目標だった」
安岡さんは、27歳のとき、血液のがんの1つ「悪性リンパ腫」と診断されました。
さい帯血移植を経験 安岡祐一さん
「最後の薬を使ってもガン細胞はなかなか消えなかった。余命1、2か月っていう診断を受けた」
骨髄移植のドナーを探しましたが見つからず、提案されたのが「さい帯血移植」だったといいます。
移植から5か月後には、無事に退院。
車いすバスケットボールのチームで、スポーツも再開できました。
さい帯血移植を経験 安岡祐一さん
「難しい状態からでも、さい帯血の力をかりっていま普通に生活できているので、提供してくれる人が増えて、助かる人がもっと増えてくれれば」
お母さんと赤ちゃんの命をつないだ「さい帯血」が、次は病気で苦しむ人たちの命を救う。
その環境が充分に整うまでには、まだ課題も残されています。
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