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佐倉綾音の表現論—正義を貫く“変わらない自分”の在り方

クランクイン! / 2025年1月5日 12時0分

それで、「自分のための表現」も少しずつ取り戻してみようかなと思ったんです。それは自己満足で構わないし、誰かに見せてもいいけれど、見返りを求めない形で行うもので。たとえば、絵を描いてみたり、10代前半に「こんなことやってみたいな」と思っていた純粋な気持ちをもう一度思い出す作業をしてみたり。そうした時間を持つことで、新しい感覚が生まれて、それがまたお仕事にも役立っていくんじゃないかなと思っています。

――素敵ですね。私もよく悩むことがあるのですが、表現活動もビジネスである以上、最終的なゴールは「成果」や「数字」になるけれど、出発点からそれを目的にしてしまうと、表現する意味を見失いがちになるというか。

佐倉:そうなんですよね。もちろん、ビジネスはビジネスで楽しい部分もあって、数字を確認しながら「これがうまくいってる」とか「ここが弱いからどう改善しよう」と考える作業は、自分に向いているところもあると思うんです。でも、そうした商業的な視点だけではなく、自分のための表現が、結果的に商業の部分でも自分の感性を底上げしてくれるような形で繋がっていけばいいなとも思っていて。

私は0から1を生み出すクリエイターではないけれど、声優として「表現者でありたい」という気持ちはずっと持ち続けていて、その表現に向き合う時間はしっかり取りたいと思っています。たとえば、舞台を観に行ったり、敬遠しがちな朗読劇のお仕事にも、今は「この布陣ならやってみたい」と思えるものには挑戦するようにしています。

そうすると、手元で練る台本がある期間が長くなって、より深く向き合えるんです。普段のアフレコは刹那的で集中を要する作業なので、短期間で勝負が決まることが多いんですよね。30代になった今、自分の感覚が鈍らないうちに、そうした経験を積み重ねていきたいですし、これからも努力を続けていきたいと思っています。

――先ほどの「変わらない自分を保つ」というお話しにも通じますが、「自分の感覚が鈍っていくかもしれない」という怖さはありますよね。

佐倉:人間の衰えって、どうしても自分では気づけないことが多いんですよね。今も自分の知らないところで何かが変わっているのかもしれないと思うと、とても怖くて。

だからこそ、自分を俯瞰で見ることを大切にしているものの、俯瞰で見ているつもりが、実はそれ自体が自己満足になっていることもあるかもしれないので、そこは意識して慎重にしようと思っています。自分で「大丈夫」と思い込むだけではなく、客観的に確認しながら、完成度やセンスが衰えないように日々心がけていきたいです。

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