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スピーカーを繋げたストリートミュージシャン ~1分でわかる大阪人の言い分~

インフォシーク / 2013年11月27日 17時30分

大阪・梅田

夢や希望を抱いて上京し、成り上がろうと生きる若者たち。だが「それで努力してるって言えるのか?」と疑いたくなる東京人もいる。

私の中では、スピーカーを繋いで歌うストリートミュージシャンがそれに当たる。

会社帰りの深夜。軽く酒を入れようと繁華街に途中下車する。人で溢れる駅改札口周辺。平日から泥酔したおっさんが隅っこで眠りそうになっている時間に音が鳴った。

ピーピーーーキキィィィィーーーーーン。

耳障りなハウリングが10秒ほど続いた後に、大きな声が聞こえてくる。

「アーアーアーアーアー… チェック、ワンッ、トゥー。OK。OK。OK。 はい!ご通行中のみなさま、こんばんはー!小野沢雄星(仮名)でーす。はい拍手~。」

突然の自己紹介が始まっても、東京人は誰一人ざわつかない。気を取られたり振り向いたりするのはダサいとでも言いたげに、ポーカーフェイスを気取っている。私は存在を発見しないと落ち着かないので探した。

小野沢君の声に興味はないがなかなか本人が見つからず挙動不審のように見回す。そして遠くの小野沢君と目が合ったとき、小野沢君は私にキラキラした笑顔をくれた。いやいや、こいつ誰やねん。俺ファンちゃうぞ。

バス・タクシーのエンジン音、大型ビジョンで躍るアイドルのCM、全面ジャケ写で覆われたトレーラーから流れる爆音の新曲らに負けず劣らず、スピーカーから轟く無名の演説。完全に路上ライブの域を超えている。一つ違えば騒音だ。

東京の繁華街は機械を積んだ路上ライブが多い。ストリートミュージシャンはいつから、スピーカーに繋いだマイクや楽器で演奏するようになったのだろう。

人通りの多い夜中は歩行者天国じゃない。機械を通して歌いたいのならライブハウスで演れ。そう思うのは、私だけなのだろうか?

私は現代の路上における定義なぞ知る気もないが、ボブ・ディランかぶれの青年がアコースティックギターを掻き鳴らし、行き当たりばったりに生の大声で夜空に向かって叫ぶ、青春。それを見た酔っ払いの中年が「おー、頑張れー」とか言って小銭をチャリーンと投げ入れる構図こそが“ストリートから始まる、駆け出しミュージシャンのサクセスストーリー”の第一章であると信じたい。

だからこそマイクスタンドの前に立ちソロライブみたいな風情の東京人や、ボーカル・ギター・ベース・ドラムのバンド編成で爆音を鳴らしエフェクターを繋いでギュインギュインいわす東京人に“第一章”のイメージが当てはまらない。

そもそもアンプが買えるヤツらだ。いうほど貧乏じゃない。そしてよく見れば格好も小綺麗。女ウケを狙っていることが見え見えな鼻につく清潔感。これらのバンドマンは音楽で成功したい夢があるのではなく、ただモテたいだけなのかもしれない。モテたいのならいっそ、あらかじめ編曲し終えた声入りの曲をスピーカーから流して、メロディにあわせて口パクしながら歌うまい自分を演じていればいい。

ところで、東京人はよく「大阪は独立国家」みたいに言うが、大阪だって他の地方都市と変わらず東京でウケていることに影響されまくる。

大阪でもスピーカーに繋がったミュージシャンを見たことがあるが、これも東京で見かけるようになってから目にするようになった。影響なのだろう。

たとえば私が大阪で暮らしていた1990年代後半から2000年代。何人もの大阪人が『ゆず』をコピーしていたかわからない。これも影響だろう。この『ゆず』のコピーは選曲だけでなく、歌い方、髪型、容姿までマネるデュオが続出していた。二番煎じから熱い夢は伝わらないが、手っ取り早く女にモテる手段として選んだことは伝わった。

15年ほど前が『ゆず』だったように、昨今はスピーカーを繋げた『サカナクション』が現代のモテる方法だとしたら、女のケツばっかり追いかけていないで夢追いかけろやと言いたい。

鹿タカシ
しかたかし ライター。大阪生まれ。大阪芸術大学にて写真を学んだ後に上京しなぜかコピーライターとなって約10年。
現在は都内広告プロダクションに勤務しながら、大阪人からみた東京人(主に上京してきた人)について研究。

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