コロナ後の世界:GAFAが教育産業に参入?/石塚 しのぶ
INSIGHT NOW! / 2020年4月8日 7時2分
石塚 しのぶ / ダイナ・サーチ、インク
私が敬愛するニューヨーク大学マーケティング学教授のスコット・ギャロウェイ氏がいつもながら非常に示唆に富むブログを書いておられたのでその内容をシェアする。
まず、今、我々が直面しているコロナ・クライシスは、全世界を間違いなく恐慌に陥れる大きな出来事であり、最近では、「コロナ後の世界はどう変わるのか?」が政治、経済、社会、文化の面で盛んに論じられている。
それに対するギャロウェイ氏の持論は「コロナの影響で『変わる』というよりは、起こるべき変化が一気に起こる」というもの。
たとえばグローサリー(食料品・日用品)のネット販売。コロナ以前のアメリカではネットのグローサリー販売が市場全体に占める割合はわずか3%程度だったが、先月中には米国世帯の3分の1がネットでグローサリーを購入したという。コロナ・クライシスが長期化すればするほど、これは一般生活者の「あたり前の」購買行動として習慣化し、コロナ後も定着すると予測されている。
何年もかかってゆるやかに起こるだろうと考えられていた変化が、光の速さで一気に起こっているということだ。テレワークも然り。ロボット化も然りである。
「光の速さで一気に起こるであろう変化」のもうひとつの例としてギャロウェイ氏があげているのが、「学校教育のデジタル化」だ。アメリカの大学はそのほとんどすべてが3月中旬にキャンパスを閉鎖し、現在は受講をデジタルに切り替えているが、ギャロウェイ氏は「年内(2020年)にキャンパスが再開することはまずないだろう」と予言している。そして、キャンパスの無期限閉鎖を受けて、「大学教育のデジタル化」が加速化することを予言しているのだ。
しかしギャロウェイ氏が描く「未来図」は、ただ単に各大学が授業をネットで配信するというだけのものではない。GAFA(グーグル/アップル/フェイスブック/アマゾン)やネットフリックス、マイクロソフトなどといったテクノロジー大手が有名大学とのタイアップで教育産業に進出してくるだろうというのだ。そうすることにより、何兆円もの「ステークホルダー価値」を創造するだろうと予言している。
アメリカでは近年、大学教育の価格高騰とそれが生み出す格差が社会問題化している。大学教育のデジタル化が価格最適化を生むとギャロウェイ氏は予言する。デジタル化することで地域障壁が取り除かれるので全世界からより多くの学生に授業を提供できる。たとえばMITのような名門校が二年制の専科コースを一人頭10万ドル(高いように思えるが今日の米大学の標準からすれば大幅ディスカウントだ)で10万人に提供するとして、年間50億ドルの売上が見込める。
これが実現すれば、より多くの人々に良質な大学教育の門戸を開くことになり、世の中のためにもなる、とギャロウェイ氏は主張する。
どうだろうか。コロナ後の世界は未知数であり不安なことだらけだ、と憂鬱な気持ちになりがちだけれども、こういう風に考えると世の中のために望ましい変化も期待でき希望が持てる。ただし、企業の経営者や、産業の未来を背負っていく若手のリーダーの人たちにしてみれば、「これからじわじわと起きる」と思っていた変化が一気に起きるのだからゆっくりと構えてはいられない。まず、Fast Learner(敏速に学ぶ人)でなくてはならないし、敏速に遂行できる人でなくてはならないということだ。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
TSMCが日本の補助金よりも欲した"2つの取引先" 台湾企業の失敗からラピダスが学ぶべきこと
東洋経済オンライン / 2024年4月11日 7時0分
-
中国の天才エンジニアが語る日本AI開発の潜在力 世界を席巻する中国人エンジニア活用がカギに
東洋経済オンライン / 2024年4月7日 7時30分
-
室蘭工業大学、学生の多様な学び、教職員の多様な働き方を 実現するためのコンテンツ管理基盤としてBoxを全学導入
@Press / 2024年4月5日 11時0分
-
米国では爆発的に成長中だが…大谷翔平選手も巻き込まれた「スポーツ賭博」を欧米メディアが問題視するワケ
プレジデントオンライン / 2024年4月5日 9時15分
-
大学と社会をつなぐ共創プラットフォーム「TRY FIELD」大阪いばらきキャンパスの新拠点、4月1日より運用開始 訪れるすべての人が、挑戦と失敗を繰り返し、創造できる場へ--立命館大学
Digital PR Platform / 2024年4月1日 14時5分
ランキング
-
1【解説】円安どこまで進む? 深刻…家計にも影響、為替介入の可能性は
日テレNEWS NNN / 2024年4月25日 20時5分
-
2英郵便局の冤罪事件、会計システム原因の富士通社長「申し訳ない」と謝罪…1月にドラマ化され批判強まる
読売新聞 / 2024年4月25日 23時0分
-
3サイゼリヤ、ギリギリ「国内黒字化」も残る難題 国内事業の利益率0.05%、値上げなしで大丈夫か
東洋経済オンライン / 2024年4月24日 7時30分
-
4アキレス、シューズの国内生産終了へ コスト増や少子化など背景
ロイター / 2024年4月25日 16時27分
-
5ベッド派?布団派?「老けない」のはどっち?頑張らずに「老いない」環境を手に入れる方法【理学療法士が助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月25日 18時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください