管理職編:リーダーは本当にチームパフォーマンスを引き出せているだろうか? 「リーダー(管理職)がチームビルディングを学ばなければならない理由」/齋藤 秀樹
INSIGHT NOW! / 2024年2月2日 12時30分
齋藤 秀樹 / 株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
◆あなたはリーダーの役割を理解していますか?
標題のチームパフォーマンスを引き出し最大化できるリーダーの役割を示します。
0:業務・数値管理者
1:指導・育成者
2:牽引・伴走者
3:達成支援者
4:学習促進者
ここで0~4までの数値を設定しているように、リーダーの役割はメンバーやチームの成長状態で変化することを意味しています。
【0:業務・数値管理はリーダーの仕事ではない】
ただし、0「業務・数値管理者」は、本来リーダーの役割ではありません。このような誰でもできるような管理業務は、個人が管理しチームとして共有できるシステムと関係性があれば不要です。
もし、管理職の業務の大半がこの管理業務であるならば、組織の生産性を大きく下げる要因がそこにあります。
また、そのような管理者が居ないと組織運営ができないというのであれば、それは組織が集団からチームになっていない。つまりチームビルディングが全く進められていないことを意味します。
更にこの状態のままでチームを創っても個人商店の集まりとなり、リンゲルマンの法則(綱引き理論)が適用され、頭数の半分も成果を生み出せない烏合の集が出来上がります。
【1:指導・育成者】
1以降が本来のチームパフォーマンスを高めるリーダーの役割になります。
そもそもチームはチーム力があるからチームなのです。チーム力がないチームは「ただの集団(烏合の集)です。
ただの集団の特徴はパフォーマンスが低く、メンバーが成長せず、最悪病んで行く。
この状態はチームでありながら、誰も本来のチーム創りを知らず、取り組まない結果です。
そんなチームで多くの時間(人生)を費やすのは、本当に悲惨としか言いようがありません。
チーム力は、チームシナジーとも言われます。このことからも分かるようにメンバー間の相互支援、協力、協働によって生まれる爆発的なエネルギーと創造性を指します。
これはどのような組織にも例外はありません。
◇フォロワーシップを引き出す
それを創り出す第一歩がメンバーの自立性と自発性、つまりフォロワーシップの育成と強化になります。
これだけ聞くと読者の皆さんは、個々のメンバーをどう育成するかを考えるのではないでしょうか。
そう考えるのも無理はありませんが、メンバーが一人乃至は二人であれば、できるかもしれません。
それが5人、10人と増えたり、既に大勢のメンバーを抱えているリーダーにそんなことが可能でしょうか。
だからこそメンバーが成長できる器(チーム)創り、チームビルディングが必須になるのです。
ここで具体的な方法を期すのは不可能ですので、私の書籍や他の記事、日本チームビルディング協会等のHPを参照ください。
ここでの指導育成とは何を指すのか。ここでも多くの皆さんは業務知識をイメージされる方が多いと思います。
それも一つではありますが昨今よく聞くようになった「心理的安全性」という言葉があります。
これは数年前にGoogle社が研究報告を発表し、世界的なマネジメントの中核要素となったものです。Google社においてはチームに「心理的安全性」があれば、100%高い成果を生み出せる、という強烈なチームの推進力を指しています。
しかし、日本で起こりがちなブームとしての取組では、心理的安全性の本質を組織に活かすことはできません。
◇心理的安全性の本質とは
それは何故か。
それは、心理的安全性が成果に結び付くには前提があるからです。
下記の公式を見てください。
チーム成果 = Do × Be
これは長年、私がお伝えしてきた公式です。
この公式で成果が出ない日本の組織に実情と原因を説明することができます。
Doとは「方法論」「戦略・戦術」「知識」「仕組み」など皆さんも馴染みのある日常的な仕事の中身ですね。車に例えるとDoはボディやナビゲーションシステムのようなものです。しかし車が進むためにはガソリンが不可欠ですね。それに当たるのがBeです。
Beとは「モチベーション(本気)」「当事者意識」「自立・自発性」「信頼関係」「何でも話せる場」「忖度・同調圧力の無い場」そして「創造性」などを指します。そして前述の「心理的安全性」はBeの中心的な要素です。
◇今、必須となるリーダーの役割
つまり、現代においてリーダーが行わなければ指導・育成とは、このBeを引き出し高めることを指します。しかし、残念なことにリーダー自身のBeの能力が乏しい場合が多い。
それにも理由があります。
日本はBeの指導・育成をしなくても車が走った時代が過去(昭和時代)にあったからです。
Beは様々なものが代用できます。最も分かりやすいのは「危機感」です。災害や会社が危機的な状況に置かれると集団は生まれ変わり、行動のスピードが劇的に上がり、協力し合い統率ある行動がとれることが多々あります。
昭和時代の特徴は発展途上の国々にも見られるように「バイタリティー(個々の欲望:出世したい、金持ちになりたいなど)がBeとしてガソリンの役割を果たしていました。それが平成、令和と徐々に枯渇し、今に至っています。もちろん、創造性が乏しい社会的無策がそれに追い打ちをかけていますが。
結果、日本企業(日本社会)はガス欠の車になってしまったのです。
では、現在、私達が作らねばならないガソリンとは何でしょう。それは皆さんもご存じのとおりBe(モチベーション、やる気、本気度、積極性、強い問題意識、行動力、他人者や社会への興味関心、創造性など)です。
それを自らが学び実践する人がリーダーであり、そのような人材が増えない限りチーム、組織、社会の再生は不可能です。それは誰かが、ではなく、私たち全員に問われています。
その学びはチームビルディングの中にあり、リーダーが取り組むべき最初の役割はBeを体現し、他者へ指導・育成できる存在になることです。
さて、2の牽引・伴走以降については次回またお話ししたいと思います。
ありがとうございました。
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