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ダークパターンの使用は企業への信頼を失わせる愚策/日沖 博道

INSIGHT NOW! / 2024年4月17日 7時7分

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日沖 博道 / パスファインダーズ株式会社

ダークパターン(Dark pattern)とは、ウェブサイトにおいて「ユーザーが無意識に不利な行動を取るように設計された、悪意のあるデザインや表記」もしくはそれらを使う手法のこと。要はユーザーを欺くためのやり口のことだ。

米プリンストン大学が主なダークパターンを7種類に分けた分類を2019年に示している(その後もっと細分化したものも考案されているが、このくらいの分類数のほうが実用的)。ユーザーとしてはこれらをあらかじめ知っておくと、「うっかり騙される」可能性を下げることができる。

パターン1:Sneaking(こっそり)

ユーザーにとっての不利益や望ましくないことなどを意図的に隠すやり方。本来ならユーザーが選ばないはずの行動に誘導することを狙う手法。例えば欲しい商品を注文したら説明もなしにオプション商品が紛れ込んでいて自動で選択される、といったものだ。

パターン2:Fake Urgency(緊急性偽装)

事実と異なる締め切りを示して焦らせることで、購入や申込などに至らせるやり口。例えば、「まもなくセール終了、お急ぎください!」といった表示やカウントダウンタイマーでユーザーを焦らせながら、実際にはセール終了時期が開示されていないといったケース。ちなみに「今だけ入会費無料キャンペーン!」的なものをずっとやっている場合もこれに当たる。

パターン3:Misdirection(誤誘導)

文章やデザイン、心理などを利用して、ユーザーに特定の選択肢を選ばせる/選ばせないようにする手法。例えば、選択画面で「私は○○しないことを、希望しません」のようにわざと紛らわしい案内をすることや、「いいえ」の部分をグレーアウトしたデザインにして選択しにくくする手法もこれに該当する。

パターン4:Fake social proof(社会的証明の偽装)

事実と異なる他人の行動や推奨を根拠としてユーザーの購入意思決定に影響を与える手法。例えば、その商品を多くのユーザーが閲覧しているように見せかけたり、(Amazonなどでよくあるが中国辺りの出品者が)「サクラ」による誇張ユーザーレビューで人気が高いように見せかけたりするケースがこれに該当する。

パターン5:Fake scarcity(希少性の偽装)

商品やサービスが入手しにくい・希少性が高いとユーザーに思わせ、購入機会を逃すことを恐れたユーザーに行動を促すもの。例えば、商品のカート付近に「在庫あと1点」「在庫僅少」といった虚偽のメッセージを表示して不当にユーザーを焦らせる行為が該当する。ECサイトでよく見かけるやり口だ。

パターン6:Obstruction(障害物)

過度な障害を設けてユーザーが希望する行動を取らせない手法。例えば、登録は簡単にできるのに、解約の場合はとんでもなく複雑なステップを取らせるとか、カスタマーサポートに電話せねばならないのに、その電話がなかなかつながらずに結局諦めさせるなど、実に様々なパターンがある。小生も、大手通信企業やソフトウエア企業のサービスでこの手口に悩まされた。

パターン7:Forced action(強制)

ユーザーが希望の行動を行うために、望ましくないアクションをユーザーに強要する手法。例えばCookie同意のポップアップ確認ボタンをクリックしないとコンテンツを閲覧できないとか、商品の情報を見たいだけなのに、個人情報を入力してアカウントの作成を強制するようなケースがこれに該当する。グローバルなIT企業や会計士企業で未だにこのやり方を採っているところも少なくない。

さてこうして見てくると、意外と大手企業や有名ECサイトでもダークパターンを平気で使っているところが少なくないことに気づくはずだ。

しかしダークパターンに引っ掛かったことに気づいた、または解約に難儀したユーザーからは「二度とこんな企業から買うもんか」と反発される可能性が高い。その仕掛けに気づいたユーザーからは少なくとも不評を買う。へたをするとSNSで炎上しかねない。碌なことはない。

それなのになぜこんなに「流行」していて、しかもずっと続けているサイトが多いのだろう。

ウェブサイトのデザインを請け負っている知人に尋ねてみると、企業の担当者に「そもそもダークパターンがいけないとの自覚がない。むしろ有用なテクニックだと勘違いしている。そのため実際に依頼されることもある」とのショッキングな回答が返ってきた。

その背景として、企業担当者は「短期的成果を上司から迫られている」ので「安易に他社を真似ることに躍起」だというのが実情のようだ。ウェブコンサルがこうした手法の「ノウハウ伝授」をウリにしているケースもあるようだ。それで同じようなやり口が各業界で広まっているのかと納得がいった。

しかし紹介してきたように、ダークパターンというのは犯罪ではないのかも知れないが、日本人が大好きな「誠実さ」とは真逆のやり口だ。短期的には成果を上げるかも知れないが、いずれ痛いしっぺ返しを食らう恐れが高い、麻薬のようなものだ。

でも担当者レベルではどうにも自発的に脱却しにくいのも実情だ。経営者諸氏および事業責任者は早急に、自社のウェブサイトがダークパターンを使っていないか、緊急点検の号令を掛けるべきだろう。

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