シチュエーションセンシングで顧客サービスの価値を高める/松井 拓己

INSIGHT NOW! / 2014年7月2日 11時21分

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松井拓己 / ワクコンサルティング株式会社

お客様のシチュエーションに合わせたサービスを提供することができれば、サービスの価値は格段に高まりそうです。シチュエーションセンシングでお客様に喜んでいただけるサービスを実現するためには、何をセンシングするべきなのでしょうか。

 例えば車での観光旅行中に「お昼でも食べようかな」と思っていたら、その地域にある自分好みのお店のランチ情報がカーナビに届いたら。つい行ってみたくなりますよね。

また、仕事で終電を逃して悔しい思いをしていたら、携帯電話に近くの乗り合いタクシーやホテルの割引チケットが届いたら、自分の携帯電話を誉めたくなってしまいます。

あるいは、ショッピングからそろそろ帰ろうかなと思っていると、近くのデパ地下でお総菜やワインのタイムセールや試食をやっていると教えてもらえたら。ついつい余計な買い物をしちゃいそうですね。

こんなことを実現するための考え方がシチュエーションセンシングです。

 お客様のシチュエーションに合わせたサービスや情報提供ができれば、サービスの価値を格段に高めることができそうです。もしかするとお客様は、サービスを使えば使うほど「私だけのサービス」と、愛着を持ってもらえて、他社との差別化になるかもしれません。

■シチュエーションセンシングは難しそう?

「お客様のシチュエーションを捉えて気の利いたサービスを。」それは納得だけど、シチュエーションといっても千差万別。いったい何から手を付けたら良いか 見当もつかない。シチュエーションを捉えるには、最新の技術を駆使しないと実現できないのでは。と、ハードルが高く感じてしまうかもしれません。しかし案 外、明日からでもトライできることがあります。

まずは、自社サービスにおいてお客様のシチュエーションにはどんなものがあり、それをどう捉えるかを整理してみると良いと思います。一般的には、季節や気 候、天気、時間、場所、利用目的、同行者、感情や体調の変化など、シチュエーションは様々です。例えば天気や気候であれば、天気予報をチェックすることで ある程度捉えられそうです。位置情報であれば、GPS機能やセンサー、ICカードなどの技術を活用する必要があるかもしれません。利用目的は、お客様との コミュニケーションやアンケートを通して教えていただく必要がありそうです。感情や体調の変化であれば、サービススタッフの共感性や観察力を発揮して感じ 取らなければなりません。このように、必ずしも最新技術の導入がなくても、お客様のシチュエーションを捉えることはできそうです。

とは言え、お客様のシチュエーションは千差万別です。そこで、価値あるサービスを提供するためには、どんなシチュエーションを捉えるべきかを定義する必要があります。捉えるべきシチュエーションが明確になれば、明日からでも実践できることはありそうですね。

しかし実は、苦労してお客様のシチュエーションを捉えても、それだけでは価値あるサービスは提供できません。

■ただ単にお客様のシチュエーションを捉えても、お客様は喜ばない

例えば、ランチタイムにお客様が銀座にいることを特定できても、そのお客様が「和食好き」か「イタリアン好き」かを把握せずに、闇雲にクーポンを携帯電話 に送りつけてもお客様は喜びません。それどころか、的外れな情報ばかりが送られてくるようでは、迷惑メール(迷惑行為)と言われてしまいます。価値ある サービスを実現するためには、そのシチュエーションにいるお客様の「事前期待」を掴まなければならないのです。シチュエーションセンシングの場合、事前期 待の中でも特に大切なのは、「個別的な事前期待」や「状況(シチュエーション)で変化する事前期待」です。

*事前期待の構成については、以前の記事『CS向上のコツ:どの事前期待に応えるか』をご覧ください。

「個別的な事前期待」は、お客様ごとに異なる事前期待です。例えばクーポン配信のような情報提供型のサービスの場合、お客様の個別的な事前期待はどんなも のでしょうか。まず思い浮かぶのは、趣味趣向に関する事前期待ですね。「和食好き」、「イタリアン好き」、「ガッツリ食べたい」、「ヘルシー志向」、「オ シャレなお店が好き」、「できるだけ安く済ませたい」などなど。さらには、情報配信方法についても事前期待に違いがありそうです。「情報はメールで届けて ほしい」、「メールは1日に3回以内が良い」、「必要な情報は自分でサイトで探すからメールは不要」など、お客様ごとに違いがありそうです。このように、 お客様ごとに事前期待は異なるものです。

また、「状況(シチュエーション)で変化する事前期待」とは、あるシチュエーションではお客様はいつもと異なる事前期待を抱く、というものです。例えば、 いつもはサービススタッフとちょっとした会話を楽しみたいと思っているお客様でも、急いでいるときには余計な会話はせずに用事を済ませたいはずです。疲れ ているときには、そっとしておいてくれることを期待しているかもしれません。急に雨が降り出したときには、タオルを出してくれたり、傘を貸してくれたら、 ホスピタリティを感じてしまいます。このように、シチュエーションによってお客様の事前期待は変化するのです。

このように、ただ単にシチュエーションを捉えるだけでなく、そのお客様の「事前期待」を掴むことで、どんなサービスを提供したらお客様に喜んでいただけるかが明らかになります。

しかし実際は多くのサービスが、お客様の事前期待を意識せずに、「良いサービスは喜ばれるに決まっている」と勝手に決めつけて、一方的にサービスを提供し てしまっていることがほとんどです。残念ながらそれでは、迷惑行為(迷惑メール)や無意味行為、余計なお世話と言われてしまいます。以前ご紹介したサービ スサイエンスの中の「サービスの定義」や「顧客満足の定義」が示すように、サービスでお客様に喜んでいただけるかどうかの分かれ道は、お客様の事前期待に 合っているかどうかの一点です。その意味では、シチュエーションセンシングを活用してサービスでお客様に喜んでいただくためには、シチュエーションをどう 捉えるかにばかり注力するのではなく、いかにお客様の事前期待を掴んでそれに応えるかを意識することが極めて重要なのです。

今後、サービスに関する新しい考え方や技術の活用、新サービス立上げの際には、「お客様の事前期待を掴まないとサービスを提供することすらできない」(事 前期待に合っていない行為はサービスとは呼んでもらえず、余計なお世話・無意味行為・迷惑行為と呼ばれてしまう)ということを意識して取り組んでいただけ たら幸いです。

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