自分たちの活動の社会性を測るものさし/小槻 博文
INSIGHT NOW! / 2014年8月19日 17時42分
小槻博文 / 合同会社VentunicatioN
【ベンチャー・中小企業・NPOの広報・PR活動事例】
地域内で育児を共助しあう仕組みづくりを進めるソーシャルベンチャー・株式会社AsMama。今回は同社の事業活動、そしてそれらを世の中に広めるための取り組み(広報・PR活動)について紹介しよう。
[インタビューバージョンは以下から] 広報・PR情報サイト「広報スタートアップのススメ」 http://www.pr-startup.com/
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地域共助によってさまざまな社会課題を解決
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代表の甲田恵子さんは、元々は起業など一切考えたことがなかったと話す。しかし前職を会社都合で退職することになり職業訓練校に通っていた時に、学歴も能力も高いにも関わらず、出産や育児などの理由で働きたくても就職先が決まらない女性たちと出会う一方で、育児に対して強い信条を持った専業主婦と話しているうちに、両者が知り合うきっかけをつくり、ルールを設けたうえでお互いに子育てを助け合うことが出来れば、
・両者ともに収入を得る機会が増える(就業、育児支援の謝礼)
・世帯所得が増える(経済効果)
・経済的理由により第二子を産めない状況を改善する(少子化対策)
・地域内で育児に関心を持つ人が増えることで、児童虐待の抑制につながる(児童保護)
・幼少期から多くの大人と接することで多様性を育むことが出来る(教育効果)
など、さまざまな社会課題の解決につながるのではないかと考えるようになった。
しかし当時そのような仕組みがまだないことを知り、ならば自分でその仕組みをつくろうと考えて、「顔が見える地域交流の場」と「顔見知り同士で子育てを支援しあう仕組み」をつくるべく、AsMamaは2009年11月に設立された。
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子育てを頼り合う環境づくりに向けて
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AsMamaのサービスの核となるのは“ママサポーター”という存在だ。“ママサポーター”は、毎月保育園や幼稚園、公園やママサークルなど親子が集まるところへ赴いては、AsMamaのサービスを紹介しながらイベントへの参加を促し、そしてイベント会場では子育て世帯同士の交流を促すことで、お互い顔見知りになってもらい、必要な時に子どもを預け合える関係をつくってもらう役割を担っている。
こうして託児体験をする機会やイベントを開催しながら子育て世代を誘致し、そして会場にて “ママサポーター”がファシリテーションすることで、来場者同士の交流を促していく。そして「子育てシェア」というSNSを活用することで、子どもを預かってもらいたいときに“顔見知り”同士で預かり合うことが出来る仕組みとなっている。
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広報とは自分たちの活動の社会性を測るものさし
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元々甲田氏は前職で広報やIR(投資家向け広報)を担当していたこともあり、その経験を活かして数多くのメディアにて同社の取り組みが報じられている。しかしその一方で、子育て世代はマスコミ情報だけでは態度変容を起こしづらい側面があり、子育て世代に対して最も有効なのは“口コミ”であるという。
したがってパブリシティでマクロ的な環境づくりをしながら、一人ひとりへは口コミで参加・関与を促していく、そして参加・関与してきた子育て世代と接しながら等身大の子育て世代の実態を把握・発信する、そんな循環をつくるべく広報・PR活動に取り組んでいると話す。
そうした中で甲田氏が考える広報・PRについて聞くと「自分たちの活動が社会に認められているかを図るものさし」だという答えが返ってきた。
「広報・PR活動は、自分たちがやっていることが社会に認められなければ成果をあげることは出来ません。パブリシティでいえば、記者の方は中立性を大切にされているので社会にとって意味があるかどうかが判断基準ですし、口コミについても意味がある・良いものだと思ってもらえなければ他人に薦めてくれません。」(甲田氏)
したがってパブリシティでは「社会から求められている取り組みである」ということをきちんと訴求出来るように、エビデンスをきちんと積み上げることを意識している。それによってAsMamaの取り組みはもちろんのこと、その背景である社会課題そのものの啓発にもつながっている。
また口コミに関しては、先述した“ママサポーター”が鍵となる。“ママサポーター”に対しては業務として報酬を支払われているが、しかし仕事だからとただ淡々と説明しても相手には伝わらない。それ以上に彼女たちがAsMamaの取り組みに共感してこそ「もっと多くの人に教えてあげたい」「もっと多くの人の役に立ちたい」というモチベーションとなり、そしてその想いが伝播していくのだろう。
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人が生きていく上で“共助”が当たり前の世の中にすべく
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AsMamaでは、子育てにおける社会インフラをつくるべく取り組んでいるものの、「怪我や急病のときには誰もが救急車を想起しますが、では私たちの取り組みがそのレベルに達しているかと言えばまだまだです。」(同氏)と話す通り、社会インフラとして成立させるためには認知が重要であり、今後もまずは知ってもらうべく広報・PR活動を積極的に進めていくとしている。
また事業面では、“ママサポーター”を早期に10,000人にまで増やすとともに、地域コミュニティもゼロワンだけでなく、保育園や幼稚園、行政などと連携することで、出産したら、保育園に入園したら「子育てシェア」へ参加するのが当たり前という状況にしていきたいという。
更には“子育て”に限らず“介護・福祉”や“障害者”等にまで対象分野を広げたり、日本に限らず海外展開も進めたりしていくことで、「人が生きていく上で“共助”しあうのが当たり前の世の中にしたい」(同氏)と力強く語ってくれた。
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