秋ビール、差別化のカギは、配色にあり。/山田 美帆
INSIGHT NOW! / 2015年8月27日 21時0分
山田 美帆 / カラーコンサルタントRosa
皆様こんにちは。
カラーコンサルタントRosa代表・山田美帆です。
秋ビールの季節になりましたね。
まだまだ暑い日が続く中でも、こういう季節限定ものを見ると、つい買いたくなってしまいます。
■秋ビールとは
毎年夏の終わりになると、出てくる秋ビール。
相対的に濃厚でコクがある味で、アルコール度数が少し高めのものが多く、ごくごく飲める夏のビールとは違う味わいを感じることができます。食欲の秋にぴったりな旬の食材と合うように作られているんですね。
秋ビールの先がけになったのは、1991年に発売された「キリン秋味」ではないでしょうか。
今年25年目となるこちらのパッケージには、発売当初を除いて、ずっと秋を象徴する紅葉のイラストが使われています。
参考:キリン秋味HP
■紅葉のデザインのパクリ疑惑
最近、ビールのパッケージに季節を感じるものが多くなっています。
特に桜の季節は、多くのビールに桜が印刷されていました。
これは四季のある日本ならではの演出でしょう。
秋と言えば紅葉。
売り場に、紅葉の描かれたパッケージが並ぶだけでも、私たちは秋を感じることができますね。
ところが、様々なメーカーが、秋のビールや発泡酒や第三のビールを出すようになり、どのパッケージにも紅葉が描かれるようになったため、一見はどのメーカーの商品か区別がつかないと言われる方も増えてきました。
特に、2011年に発売された、「キリン秋味」と「サントリー秋楽」は、あまりにもパッケージの色と書体が酷似していたため、間違って購入した方も多く、ネット上では物議をかもしました。
前者はビール、後者は第三のビールと呼ばれているものなので、価格は全く違うのですが、うっかり購入する可能性があるくらいそっくりだったのは否めません。
まあ、紅葉を描けば同じような色合いになるかもしれませんし、ビール業界では、先行商品が流行した場合、別のメーカーであっても、近い色合いで発売することが多いそうなので、似てしまったのかもしれませんね。
あの話題になっている方も、このようにおっしゃっていましたね。
「ゼロベースからデザインを創り出すことは一般的ではありません。どこかで見たデザインから無意識的に着想を得ることは、珍しいことではありません」と…
同じような素材を使うと、似たようなデザイン、もしくはそっくりなものになる事もあるのでしょうね。
しかも今思えば、皮肉にもサントリーでしたし…
■今年は大きな差別化が!
その後も紅葉のデザインは受け継がれてますが、赤の色合いが微妙に変わったり、書体も変わったりしています。
今回は、先日発売された第三のビール3種について分析したいと思います。
先日発売された、第三のビール「クリアアサヒ秋の琥珀(向かって左)」も紅葉をイメージしたデザインと色合いになっています。
こちらは、クリアアサヒをベースにしてるため、「秋味」と同じような色使いでも、そこまで類似して見えません。
このような赤とゴールドの組み合わせは、リッチな気分を与え、心を温めます。
ただ、秋のビールを現す典型的な配色なので、遠目に見ると紛らわしいと思います。
そこで今年は、サントリーとサッポロの第三のビールが、まったく違うイメージのパッケージになっています。
写真右が「サントリー円熟の秋」です。
プレミアムモルツや金麦と同じように紺をベースにしています。こちらでしたら、サントリーカラーが強く出ていますので、ぱっと見でもサントリー商品と認識しやすく、
同社の商品と間違えることはあっても、他社の商品とはしっかり差別化されています。
2度と紛らわしいとは言われないでしょう。
このように紺とゴールドの組み合わせは、知的で上品なイメージを与えます。
ただ、紺は黒に近い色なので暗い印象がありますが、月の光のゴールド、そしてそれに照らされる紅葉を描くことによって、パッケージに暖かさと豊かさが入ってくるのです。
まるで1枚の絵のようなパッケージがプレミアム感をもたらし、秋の夜長に、ゆったりとビールを楽しもうと言う気持ちになるのです。
真ん中が「サッポロ秋の本熟」です。
こちらのデザイン、初めて見たとき衝撃が走りました。
紅葉と言えば、赤やオレンジのイメージが強いのですが、秋に緑のパッケージを用いるのは画期的ですね。
確かに常緑樹は一年中緑ですし、紅葉の赤やオレンジと組み合わせることによって、補色関係(正反対の色の関係)のため、お互いの色味を引き立てます。
プラス、真ん中にゴールドを配置することで、ビールの美味しさをほうふつさせ、高級感をもたらしてくれます。
しかもこちらの落ち着いた深緑は、しっかりとした存在感があり、くつろぎを演出してくれる色。
秋のまったりした時間を感じることができます。
このようなベースカラーのビールは珍しいので、数あるビールの中ではとても目につきやすい配色です。
■同じ素材でも周りの色や視点次第でまったく違うデザインになる
このように同じコンセプトの商品の場合、どうしても色が偏ってしまいますが、ちょっと視点を変えることによって、他との差別化ができるのです。
今までは紅葉と言えば、ベースカラーに紅葉の色だけを前面に押し出していましたが、背景の一部として捉えることによって、まったくデザインは変わってきます。
視線や設定を変えたり、他の色との組み合わせで、秋ビールの特徴である、まったりと楽しめる「薫り」や「コク」を味わうことができるのです。
配色の法則を知り、様々な角度からアクセスすると、オリジナルに溢れたデザインが誕生するのではないでしょうか。
今日のひとこと
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同じコンセプトでも配色や視点を変えることによって差別化される!
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