成果に結びつく人材開発~“HPI”による4つのステップで組織を生まれ変わらせる~/HRレビュー 編集部
INSIGHT NOW! / 2016年2月18日 17時31分
HRレビュー 編集部 / 株式会社ビズリーチ
企業や組織のなかで、人材育成や人材開発を何のために行うかと問われれば、最終的なゴールは、各組織が掲げる目標を達成するためだという考え方があります。この視点に立つと、人材育成や人材開発に携わる「トレーニング関係者」「社内外のコンサルタント」「キャリア担当」「組織開発担当」「研修ツールの専門家」と呼ばれる人たちは、経営陣のパートナーとして、優れたパフォーマンスを実現することが期待されます。
経営陣のパートナーとして求められる「組織成果に結びつく人材開発」
HRD(Human Resource Development)、つまり人的資源を戦略的に育成・開発する仕事に関わる人には、経営陣のパートナーとしてプロフェッショナルな専門性や、組織の成果に結びつく人材開発が求められているといわれるようになってから、かなりの時間がたちます。
このようなHRDの仕事に携わる人間が何をするべきか、どうしたら高いパフォーマンスを上げられるか、という研究が専門家によって進められてきており、そのコンサルティング手法として近年注目を浴びつつあるのがHPI(Human Performance Improvement)という考え方です。
システマチックなアプローチのHPIで、組織のパフォーマンスを改善
世界最大の人材開発研究機関である米国のASTD(American Society for Training & Development=米国人材開発機構)では、HPIとは、「人が関係して発生するパフォーマンスのギャップを明確にし、解決することで組織の目標を達成させるシステマチックなアプローチ」と説明しています。成果の成り立ちを明確にし、組織の資源を適切に組み合わせて、介入策を提案・実行することを推奨しているのです。
HPIの進め方 4ステップ
HPIの進め方にはいくつかのモデルがありますが、ここではASTDが推奨する基本プロセスをご説明します。
1 ビジネス分析
まず、HRD部門の人材が、クライアントとなる部門や組織の人材とともに「ビジネス分析」を行います。ビジネスゴールを確認し、成果目標と人材のパフォーマンスの関係性を明確にします。
2 パフォーマンス分析
次に「パフォーマンス分析」の段階に入ります。期待されるパフォーマンスの状態と現在のパフォーマンスの状態を調べ、そのギャップを明らかにします。そして、そのギャップの「原因の分析」を行います。よくあることとして、問題を早く解決したいという思いから、一時しのぎの解決策や、表面的な問題だけを解決することに注力してしまうことがありますが、ここでは根本的な原因を見極め、問題の発生に関連している仕組みに着目します。この問題発生の仕組み・原因こそが、本質的に解決しなければならない「課題」なのです。
3 インタベンション選択
原因が分析できたら、「インタベンション選択」です。インタベンション(Intervention)とは介入策のことで、解決策(Solution)とは異なります。ASTDのHPIモデルでは、インタベンションは解決されるかどうかは問わず、解決の支援となる施策を意味します。一方、解決策とは、実際に解決に結びつける施策を意味します。解決策の主体はHRD部門ではなく、クライアント(各部門・組織)にあるという視点から2つを区別しているのです。そして根本原因の解決に導くインタベンションを選択し、実行します。
4 実行結果の評価
最後は「実行結果の評価」です。「2 パフォーマンス分析」で期待されたパフォーマンスを発揮できたかを判断します。
まとめ
人材を育成・開発することを通して組織を生まれ変わらせ、ビジネスゴールとして掲げた成果を達成するためには、ただ単に研修を行って個々人のスキルを向上させるだけではなく、HPIモデルのようにシステマチックなアプローチで組織そのものの力を向上させる必要があります。このプロセスを通すことで、組織ごとにやるべきことが明確になり、優先度もつけやすくなります。
初出『HRトレンドハンドブック』(HR総研)
下山博志(株式会社人財ラボ 代表取締役社長/HR総研 客員研究員)
編集:冨田有香(HRレビュー編集部
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