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ぶんどり合戦に勝つ地方や企業が生き残る時代の到来を告げた国勢調査/小笠原 昭治

INSIGHT NOW! / 2016年3月9日 7時0分

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小笠原 昭治 / インターアクティブ・マーケティング

国勢調査で初の人口減少が確認されましたね。2010年からの5年間で94.7万人減少していたそうです。

約95万人といったら、政令指定都市が一つ、県が一つ消えたようなものです。

具体的には、人口15位の大阪府堺市(84万人)規模。

県別では、山梨(86万人)、佐賀(84万人)、福井(80万人)、徳島(78万人)、高知(76万人)、島根(71万人)、鳥取(58万人)の県民が丸ごと消えたに等しい。わずか5年間で(驚)です。

昨年2015年に実施された国勢調査ですから、現在2016年は、ますます減少しているに違いありません。たとえば、秋田県は、来年、確実に100万人を下回るそうです。

1920年の調査開始以来、初めての減少ということは、大正9年以降ほぼ一世紀の間、人口は増加するのが常識で、人口増加を前提に、政治・経済・社会・人々の暮らしがあったといっていいでしょう。しかし、

100年の常識が破られた

のですから、これまで体験したことのない未曽有のパラダイムシフトが起きます。

みんな、肌で感じていたんですケドね。ショッピングモールやスーパーにお年寄りが増えた……お客さんが少なくなった……取引先の企業が減った……

それ(国勢の減速)が、現実に起きていた事実を、数字で裏付けるかたちになりました。

その一方で、首都圏4都県は、約51万人も増えました。減った人口95万人の半分以上も、首都圏のみ増えています(滋賀県も微増)

地方は仕事が少ないから等々いろいろな理由はあるでしょうが、地縁、血縁、しきたり、風習、暗黙の了解といった価値観を押し付けられにくい首都圏は暮らしやすく、

「都会は冷たい」のではなく、

  • 他人に干渉したくない(されたくない)だけ
  • わずらわしい人間関係が苦手なだけ
  • その土地特有の不文律にしばられたくないだけ
  • 自分らしく自由に暮らしたいだけ

であって、いわば、

地方で暮らすのは窮屈な人たちが、首都圏へ集まる

との見方もできます。

この見解が正しければ、

「オラが町だって、若いモンは、欲しい。けれども、よそ者が、郷に入れば、郷に従ってもらう」

これでは、地方の人口が減るのは止むを得ません。

長老達の、長老達による、長老達のための自治を維持する目的で、よそで育った若い世代を欲しがるなんて、都合が良すぎませんか?

たとえるなら、

「他社の社風を知っている社員なんぞ、使いにくくて、中途採用しない」

「いったんは、他家の家風に染まった、離婚経験者とは結婚しない」

というこだわりがあるにもかかわらず、

「中小企業には、新卒が来ない。人が少なくて困っている」

「一人は寂しい。良い人と結婚したい」

と、矛盾よりも高望みに悩んでいるようなもので、これじゃ、中小零細市町村に、若い人なんか来ませんって。

中小零細市町村ならではの強み

を発揮しなくては。

ちなみに、中小零細市町村という日本語はありません(誤用ではありません)筆者の造語です。

強みを主観的に考えると、

「これぞオラが町の強みだ」(たとえば、豊かな自然が強みだ)

と思い込んでしまいます(認知バイアス)

あるいは、そこで暮らしていると、強みが当たり前になってしまい、見えにくくなります。

しかし、よそからなら、強みが見えます。岡目八目です。

弱みも見えます。自然が豊かな地方なんて強みでも何でもない(津々浦々どこにでもある)ことも丸見えです。それでも、

強みも弱みも知っている、よそ者は要らない

のですか?郷に入った

若者の話を聞く耳は持たない

のですね?ということです。YESならば、ますます人口は減るでしょう。住民税も法人税も減り、いずれは限界集落やむなし。

いわずもがな、次の時代を作るのは、長老ではなく、若者です。そうやって、時代は移り変わってきました。

  • 大卒が学士様の時代から、石を投げれば大卒に当たる時代へ
  • どこにでも灰皿があった時代から、禁煙・分煙が当たり前の時代へ
  • 固定電話よりも、携帯電話が多い時代へ

白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫の家電三種類が、三種の神器と呼ばれた時代に、いずれ、サンヨーがなくなり、シャープが経営難に陥り、他国へ身売りするなんて、誰が想像したでしょう。

次の時代を担うのは、10歳、20歳、30歳、40歳、50歳の年下です。

20歳は50年後を、30歳は40年後の未来を見ることができます。

地方は(子供が産まれにくいのですから)、地元プロパーは少数しか育たず、これでは、

よそから年下をブン取ってくる他ありません

よね?企業も(人口や企業数が減って市場が縮小しているのですから)、

ライバルのお客さんをぶんどる

しかありません。(他に道があるとしたら、新しい価値を作る以外にありません)

同業者が集まってセミナーを開き、懇親会を開き、ゴルフに興じ、仲良くするのは結構なことですが、ライバルにブン取られるのは、自分のお客さんであり、あなたの懐へ入ってくるはずだった売上金です。

競合他店の出店でスグに顧客減を把握しやすい店舗ならばまだしも、いつ売れるか分からない商品・商売における顧客の減少は、一年後、二年後に効いてきます。

その時になって(キャンペーン等の)カンフル剤を打っても、時すでに遅し。ライバルは、既に、着々と、地道に、長期的な戦略を布いています。アリとキリギリスです。

というよりも、そうした長期的な戦略を、ナレッジワーカーたちが浸透させています(たとえば筆者のナレッジ・マネジメントは、長期接触営業戦略)

今は昔、人口や企業数が増えていた頃ならば、短期的な営業戦術(たとえば人海戦術)が功を奏しましたが、

人口や、企業数が減っているとなれば、地方自治における住民の数にしても、企業経営における顧客の数にしても、

これから付き合っていきたい相手に、時間と手間と費用( = 愛情)をかけて、人を増やす

(住民や、顧客を増やす)長期的な戦略が求められるのではないでしょうか?

それを傍証するかのように、

ぶんどり合戦に勝った地方や企業だけが生き残る時代の到来を数字で告げた20回目の国勢調査でした。

【小笠原 昭治の執筆記事一覧】

http://www.insightnow.jp/articles?author=ogasawara_shoji

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