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シリーズ:マーケティングなんてカンタンだ!・間違いがちなフレームワークを総点検【第4回】マーケティングは流れで読み解く/金森 努

INSIGHT NOW! / 2016年3月23日 7時0分

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金森 努 / 有限会社金森マーケティング事務所

■よくある「マーケティング本」の問題点

筆者の昔話と、決して宣伝ではないが著書の話をしよう。独立して数年経ち、マーケティング研修講師の仕事が増えてきた。そんな時、教材に使える本はないかな・・・と書店で一通り目を通したのだが、目的の書籍は見つからなかった。マーケティングを体系的に、その実行プロセスに沿って書かれた本がほとんどなかったのだ。「とにかくターゲットが大事!」だったり、「いいモノはどうやったらできるか」というような、いわば読み手の関心を集めそうな部分から順に章立てがされているものが多い。まぁ、商売的には間違いではないが、マーケティングを学ぶには正しくない。(結局、しかたがないので自ら執筆した結果、おかげさまで現在第7刷・1万部売れるに至っている)。

■マーケティングは流れで読み解く

筆者のコンサルティング業務に寄せられる相談でかなりの割合を占めるのが、「いいモノを作ったはずなのに売れないんです」という内容だ。メーカーとして技術の粋を凝らして良いモノを作った。価格はコストの積み上げで設定されていることが多い。販路を確保するのに苦労しながら、何とか店頭に並ぶようになり、少ない広告費をやりくりして広告や販促活動を行うのだが、売れない。そこで手詰まりになっている。

お察しの通り、上記の活動は全て「マーケティングの 4P(Product:製品・Price:価格・Place:販路・Promotion:広告販促)」である。しかし、それは最終的な「打ち手(施策)」であり、その手前が重要なのだ。 マーケティングは下図のような「流れで読み解く」のが絶対原則だ。

先の例でいえば、売れなかった商品はそもそも、「誰」に「どんな魅力を感じて」買ってもらいたかったのか。「ターゲティング」と「ポジショニング」が明確になっていない。また、「買ってくれる人」がいたとしても、そのターゲットを誰と取り合うのかという「競合環境」が明確にされていない(連載第1回 :3連載第3回:5F分析)。熱い思いでモノを作るのは結構なのだが、それを売るためにはそれなりの手順がある。それが、「マーケティングの流れ」なのだ。

【目的】

環境分析→戦略立案(顧客分析・ポジショニング)→施策立案(4P)という「マーケティングの流れ」を踏襲して、検討要素を着実に押さえて具体化していくこと。ヌケ・モレを防止しつつ、「思いつき」を廃して成功確率を上げる。失敗の確率を低減する。また、成功した場合の再現性確保と、失敗した場合の原因追及ができるようにしておくため、検証の可能性を担保することを目的とする。

【ゴール】

「流れ」を完成させる過程で常に「整合性(要素同士が噛み合って効果を出している状態)」を意識して、最終的には「全体として整合性のある全体プランを作り上げること」

【基本構造】

・環境分析

PESTでマクロ環境分析から、5Fで業界環境(連載第4回)、3Cで競争環境(連載第1回)、VCで自社及び競合のコスト構造と強み弱みを分析するという、マクロからミクロまで徐々に落とし込んでいく。もちろん、目的に合わせて単独のフレームを抜き出して使用することも可能だ。

・市場機会・事業課題の抽出

環境分析のゴールはフレームによる情報整理ではなく、「何が言えるのか」という解釈を示すことがどのフレームでも必須だが、特に上記の一連の分析を行った結果をとりまとめて「市場機会・事業課題」という戦略の方向性を示すにはSWOT分析(連載第2回)が向いている。

・戦略立案

マーケティングのまさに中心部分が、この部分である。別途稿を改めて述べるが、セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング(略して概説しておくと・・・

-セグメンテーション=対象範囲の中で”同質のニーズ”に注目してカタマリに括ること。

-ターゲティング=魅力度を評価して最も魅力的なカタマリを選ぶ。

-ポジショニング=ターゲットの二軸のマップを描いて、競合より魅力 あるポジションを取る整理をする。

・4P

(マーケティング・ミックス」とも言うが如く、ここまでの環境→STP→4Pという「縦の整合性」だけでなく、この4P相互の「横の整合性」とも言うべき、「個々の要素が噛み合ってより効果を挙げる=ミックス」ということが求められる。4Pの個々の要素に関するポイントは細かくなるので、また稿を改めて解説したい。

【使いこなしのキモ=「戻る!」ということ】

プランニング中に「不整合(もしくは、違和感)」を発見したら、1つ手前のプロスに「戻る!」ということが重要。例えば、競合優位なポジショニングが上手く取れないのであれば、ターゲットが間違っている場合もあるので、1つ手前のターゲティング決定の検討段階まで「戻る!」。その結果、そもそもターゲット候補として挙げられたセグメントの設定に問題があるようなら、セグメンテーションのやり直しの段階まで「戻る!」。また、優位なポジションが取れないと言うことは、競合の設定が間違っている場合もあるので、環境分析の3C分析まで「戻る!」。

つまり、問題があれば、どこまでも前の段階まで戻って検討し直すのがキモである。ただ、せっかく考えてきた内容を自己否定して、考え直すという作業は正直面倒くさい。だが、この「戻る!」をどれだけ愚直に行うかで成功確率が大きく変わる。むしろ、企画段階で考え直すというレベルで戻れるだけ幸いだ。戻らずに実行段階まで行ってしまい、モノが売り出され棚に並べられて「売れない・・・」となってからでは、リカバリーするのは大変だ。

【事例】

2007年なので少しだけ時代が前だが、「シーブリーズ」の製品改良を伴うリポジショニング(ポジショニング変更)の例を挙げよう。下図のように、世の中の流行・若者の行動が変化した(

最後に大事なことなので、もう一度言っておこう。「マーケティングは流れで読み解く」「マーケティングは整合性が命!」「(流れの中で整合性に疑問が生じたら)戻る!」である。

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