ニュースとその感度/野町 直弘
INSIGHT NOW! / 2016年11月16日 10時0分
野町 直弘 / 株式会社アジルアソシエイツ
最近、調達購買関連のニュースがまた増えてきました。
例えばキリンビバレッジとコカ・コーラの物流・調達面での提携交渉が行われている件。P社の海外で接待を受けた事により90人を超える社員の社内処分の発表。下請法の50年ぶりの見直し。日産自動車の三菱自動車に対する資本投下とルノー・日産アライアンスへの参加の件など。
いいニュースも悪いニュースもあります。
いずれにしても初歩的なことから言いますと、まずはこういう(少なくとも調達購買関連の)ニュースに対するアンテナを皆さんは高くしておくべきです。例えば下請法の改正についてですが、どのような改正が行われるのか、直ぐに言える方がどれ位いらっしゃるでしょうか。調達購買部門に働くものとして少なくとも下請法に関しては社内の啓蒙役にならなければならないのですから、知っていて当たり前です。
中堅バイヤーであればこういうニュースを自らの業務や仕事に役立てていくことが望ましいでしょう。多くの場合、ニュースはその時点では(大きく)取上げられますが、その後どうなったかについては殆ど報道されません。しかしニュースで何らかの企業の活動が取上げられるということは何らかの意味や意義がある訳ですし、リリースやニュースをリークした側の意図もあるのでしょう。このようなニュースの背後にどのような真実や深層があるのか考えてみたり、その活動が将来どのような決幕を迎えるのか、などを想像してみることには意味があります。もっと言えば、ニュースから自分の業務や仕事につなげて考える、アクションにつなげていくことが求められるのです。
例えばキリンとコカ・コーラの共同調達の件。共同調達は様々な形態がありますが、私が知る限り上手く行ってる事例はあまり多くはありません。だからと言って否定的になる必要もないのです。何故なら上手く行ってる事例もあるから。上手く行ってる事例の共通項はトップダウンかリーダー役が存在することだと私は考えています。
そういう点から今回のニュースをどう読み解けばよいでしょうか。コカ・コーラは元々フランチャイズ制であり、ボトラー間の共同調達は進めたくても地場サプライヤとの取引を重視することなどから中々上手くいかなった時期があったと聞いています。しかし、ボトラーの統合を繰り返し、今ではコカ・コーラウエストとコカ・コーライーストジャパンの2大ボトラーとなり、来春にはウエストとイーストジャパンの2大ボトラーが統合することが決まっています。また、新会社には米国のTCCC(The Coca Cola Company)が出資することが決まっているようです。
米国企業にとって集中調達・共同調達は当り前のスキーム。ボトラー商売は地場産業であり、互恵の塊りとも言えますが、それに対しコカ・コーラ側が米国的なトップダウンでリーダー役となり、両社の共同調達を進めていくことも考えられるでしょう。
また、報道によると今回の件はキリンHDが提携交渉をしていることを認めているようです。キリンは元々近畿コカ・コーラの大株主であり、現在もコカ・コーラウエストの社長は近畿コカ出身の方です。キリンは現在はウエスト社の株主として名前は出てきませんが、ウエストの社長とキリンHDはかなり近い立場の方がいらっしゃるのではないか、と想定されます。そうするとリードするのはコカ・コーラよりもむしろキリン側かもしれません。
いずれにしてもトップダウンないしリーダー役の存在が上手く機能すれば共同調達の成功事例として将来紹介されるようなスキームになる可能性があるでしょう。
今後はこういった共同調達を見据えた提携のケースが増えてくるのは間違いありません。このようなニュースや事例から自社のユーザーマネジメントや集中購買推進にもヒントが隠されているでしょう。
P社のニュースからは何を考えるべきでしょうか。
最近は多くの企業で接待は原則禁止となっています(いると思います)。しかしその実態は把握されていません。実際にバイヤーの声を聞くと日本国内はともかく中国などの文化が異なる国では一緒に宴席を設けないと仕事にならないという声も多く聞かれます。
そうすると当然ながら例外が多くなります。P社でも詳細は不明ですが、ホームページなどを閲覧した限りでは接待禁止というのが基本ルールとして明示されていたのでしょう。
例外が多いとしても許可すべき例外と許可できない例外をどのように切り分けていたのかその基準があったのか、なかったのか、それとも一切禁止だったのか、興味があるところです。これは他の企業やバイヤーにとっても興味がある点でしょう。
また自社としてどのような対応をすべきなのかも検討すべきです。接待に関するルールについては購買ネットワーク会等でも何度か話題になったことはありますが、どういう業界でどのようなルールが一般的である、等の情報は殆ど共有されていません。どういうルールややり方がスタンダードなのかが判っていないのが実情ではないでしょうか。
そもそも今回のP社のニュースソースは同社の広報からというように書かれています。これも興味深い点です。どんな企業も自社の不祥事などはできれば隠したがるのでしょう。
それを敢えて公開し「便宜供与などの不正は見つかっていない」というのはやや不思議な感じがします。(様々な穿った見方もできます)
このように様々な疑問がでてきますが、結論的に言うと日本企業の調達購買部門の接待の実態について、そもそも理解できてないなと、言うことなのでしょう。
そこで、今回は改めてこのタブーとも言える「接待・贈答の現状について」アンケート調査をします。
調査結果につきましては別途またメルマガ等でご案内させていただきます。
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