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自己満足の「ブランド感」は、LTVの毒にも薬にもならない 停滞する現場の特徴

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月2日 8時0分

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この記事は、垣内勇威氏の著書『LTV(ライフタイムバリュー)の罠』(日経BP、2023年)に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。なお、文中の内容・肩書などは全て出版当時のものです。

 「ブランド」と「LTV(ライフタイムバリュー、顧客生涯価値)」は切っても切れない関係にあります。ブランドを高める目的は、LTVを高めることにほかなりません。ブランディングは、LTV向上施策と同様に、長期視点の施策です。

 ブランディングへの投資は、あえて短期売り上げを追わず、長期売り上げを伸ばすことです。企業のブランドを根幹から変えるような施策や、長く貫いてきたブランドを徹底して守るような施策は、LTVに貢献するものです。例えば、潰れかけていた老朽化施設が、リブランディングによってよみがえったというサクセスストーリーは、誰しも見たり聞いたりしたことがあるでしょう。

 しかしここで語りたいのは、こうした本当にLTVに貢献するブランディングの話ではありません。言い訳がましく、都合の悪いことを隠すために発言される「ブランド感」は、LTVに全く影響がないという話です。

 皆さんもマーケティング関連の仕事をしていれば、一度は聞いたことがあるはずです。「それはブランド的に難しいです……」「ブランドを意識してこのデザインにしました!」「ブランディング施策なので数字が計測できていません」など、「ブランド」という言葉を使って何かをごまかそうとする発言を聞いたことがありませんか? ブランドという言葉はその曖昧(あいまい)性ゆえに、しばしば言い訳の道具として使われるのです。

●デザインチームのダメ出しで、停滞する現場

 デザイン性に優れた商品で知られる、ある生活雑貨メーカーの事例を紹介しましょう。

 この企業では、デザインチームが非常に強い権限を持っていました。創業期からデザイン性の高い商品を作ってきたことで、コアなファン層をつかんできたという自負があったからです。そのため、営業チームやマーケティングチームなど、他のチームが何か施策を打とうと思えば、必ず最後はデザインチームの承認を得なければならないというフローがありました。

 これだけ聞けば、デザインを大切にしている企業で、培ってきたブランドを守ろうとしているのだなと好感すら持てるかもしれません。しかし、その内情を一言で表すなら「遅くて、何も進まない」という状況でした。デザインチームの口癖が、まさに「それはブランド的にNGです」だったのです。

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