1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

東北大をイノベーションの中心地に 放射光施設「ナノテラス」が生みだす共創の場

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月9日 8時0分

写真

世界最高レベルの高輝度放射光施設「NanoTerasu(ナノテラス)」

 東日本大震災から13年が経った――。

 甚大な被害を受けた東北の地から、優れた技術や研究成果を世界に発信しているのが東北大学だ。政府が創設した10兆円規模の「大学ファンド」初の支援対象である「国際卓越研究大学」(卓越大)の認定候補にも選ばれた。

 4月9日、その東北大が震災からの「復興の象徴」として構想してきた施設が始動する。世界最高レベルの高輝度放射光施設「NanoTerasu(ナノテラス)」が官民地域パートナーシップ(量子技術研究開発機構、光科学イノベーションセンター、宮城県、仙台市、東北大学、東北経済連合会)により整備され、ユーザーとなる企業などが施設の利用を開始するのだ。

 この施設は簡単に言えば「巨大な顕微鏡」のようなものだ。「ナノ」の単位(10億分の1メートル)で物質を分析でき、新素材や新技術などの開発が期待されている。2023年5月に開かれた「G7仙台科学技術大臣会合」では、各国の科学技術大臣や海外産業団体などが視察に訪れた。

 東京からも1時間半の好立地に位置するナノテラス。同施設を「多くの企業や科学者が集まるような、日本のイノベーションのモール(中心地)にしたい」と語るのは、東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センターの高田昌樹教授だ。高田教授は資金調達のために多くの企業を訪問して経営者を説得するなど、震災以降、ナノテラス実現に10年以上にわたって尽力してきた。ナノテラス誕生の舞台裏と、今後のビジョンを聞く。

●まるで巨大な宇宙船 「研究開発のDX」に

 東北大の青葉山新キャンパス内にあるナノテラスに足を運ぶと、まるで巨大な宇宙船のような円盤状の建物が立ち現れた。東京ドームのようにも見える。高田教授はナノテラスを「企業が事業に活用することによって、社会課題の解決に対応する施設にしたい」と意気込む。

 ナノテラスは太陽光の10億倍以上の明るさ(輝度)の「放射光」を使って、モノの構造や状態をナノレベルで可視化できる施設だ。兵庫県の播磨科学公園都市には、理化学研究所の放射光施設「SPring-8」(スプリング8)があるが、ナノテラスは一部の波長の放射光で、その100倍の輝度を有している。

 スプリング8は主に、X線の中でも波長が短い金属材料などの内部を見るのに適した「硬X線」を使う。一方ナノテラスは、物質の表面を詳細に調べたり、化学反応や物質の性質が変化する様子を観察したりするのに適した「軟X線」を使うという。つまりナノテラスでは物質の機能に関する詳細なデータを取得できる。そのデータを基にグラフや2次元モデル、3次元モデルを作成することによって、誰でも視覚的に物質の状態を理解し、シミュレーションで活用できるのだ。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください