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スタートアップへの“無担保融資”が最大7200万円に 巻き起こる「VC不要論」は妥当か

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月22日 7時15分

 とするならば、融資限度額の幅が拡大したからといってVCが不要になるわけではないだろう。そもそも、制度上の限度額と、実務上の限度額は異なる。現に限度額が3000万円の時代では、有名人や連続起業家、潤沢な自己資金がある創業者でない限り、事実上1000万円をこえる融資は不可能に近かった。今回、仮に限度額が7200万円に拡充されたとしても、各支店に与えられる裁量や、起業家に付与される与信が限度額に比例して緩和されるとは考えにくい。

 従って、限度額の拡大はほとんどの新規創業予定者にとっては無縁の可能性が高く、事実上の限度額も1000万円程度で推移する可能性が高い。そもそも、今回の制度拡充は、ディープテック分野や最新テクノロジーを活用した製造業など、事業化に時間がかかり、資金調達に苦労していた大規模な初期投資が必要なスタートアップを念頭においたものだ。

 そう考えると、日本政策金融公庫の融資拡大は、限度額がボトルネックとなって国際競争力を十分に確保できないような企業に対するものであり、誰でも7200万円を超低リスクで調達できるような制度ではないのだ。ただし、自己資金の要件が撤廃されたことから、ミニマムでの起業を目指す起業家にとっても、一定の資金を調達する道は残されている点で、今回の制度拡充の意義は決して小さくないと考えられる。

 また、シード期のVCは、日本政策金融公庫が提供する資金提供にとどまらず、経営戦略の策定、国内外のネットワーク構築、後続の資金調達ラウンドへの導入など、多方面でスタートアップを支援する。これらの付加価値は、単に資金を調達するだけでは得られない成長のブースト要因だ。

 そのように考えると「VCがなくなることはないが、お金だけを出すような付加価値の乏しいVCは淘汰される可能性が高い」という表現の方がより適切だろう。

●シード期のVCが生き残るためには

 近年VCの業界では、独立系のVCが得意としてきた「シード期」や「プレシリーズAラウンド」と呼ばれる創業間もないスタートアップ企業への投資に対して、ジャフコやメガバンク系列の大手VCなども投資するような動きが目立ってきている。スタートアップを巡る投資環境については、ただでさえ加速していたが、日本政策金融公庫の融資制度拡充によって、ビジネス分野を超えた競争に発展する可能性がある。

 そんな環境下でVCが生き残るためには、どのような戦略が必要か。まずは、VCは、単に資金提供者としてではなく、スタートアップの成長を加速させるパートナーとしての役割を強化する必要がある。メンターシップ、業界の専門知識、グローバルなネットワークへのアクセスなど、スタートアップにとって実質的な価値を提供することが重要となるだろう。

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