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スバル、山崎製パン、キリン……相次ぐ“事故” 問題の根っこに何がある?

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月24日 8時35分

 しかし、労働者の数は激減しているにもかかららず、どういうわけかじわじわと増えている労災がある。それは「休業4日以上の死傷者数」だ。2022年は2万6694人で、2021年と比較して270人も増加。これはコロナ禍の反動など理屈をつけることもできるが、2017年と比べても20人増えているのだ。

 つまり、人口減少で急速に縮んでゆく日本の工場の中でどういうわけか、4日以上も休まなくてはいけないほどの重い労働災害に遭っている労働者は減るどころか、じわじわと増えているのだ。

 では、なぜこんな「異常」なことが起きるのか。その謎の鍵を握るのが、冒頭で紹介した「工場死」だ。お亡くなりになった方たちの中に、何かしらの機械などに挟まれたり、巻き込まれたりというケースが多いことに気付くだろう。実は今、工場での「はさまれ・巻き込まれ災害」が増えているのだ。

●工場で労働災害が増えている3つの要因

 この深刻さがよく分かるのが、厚生労働省静岡労働局が注意喚起のために作成した「製造業のはさまれ・巻き込まれ災害のポイント」だ。

「製造業における労働災害は、全産業の3割程度を占め産業別では最多となっており、特に機械等へのはさまれ・巻き込まれによるものが多数発生しています」

 この資料では、2022年に発生した「はさまれ・巻き込まれ」の労災事故をグラフにしている。最も多いのは「食料品」(92件)で、次が「金属製品」(55件)。冒頭で触れたスバル、山崎製パン、カネソウ、UACJの事故は一見するとバラバラで関連性がないと思うだろうが、実は本質的なところでは「はさまれ・巻き込まれ災害」という同じ問題が起きていたのだ。

 では、このような「はさまれ・巻き込まれ災害」も含めて、なぜ日本の工場で「休業4日以上の死傷者数」が増えているのか。いろいろな意見があるだろうが、筆者は主に以下3つの要因があると思っている。

 (1)「人手不足」による単独作業の増加

 (2)労働者の高齢化による運動・認知機能低下

 (3)低賃金で使い捨てにされる非正規雇用の増加

 まず(1)に関しては、先ほども申し上げたように日本の工場労働者は大激震しており、製造業は深刻な人手不足に陥っている。しかし、その工場を運営している企業側の業績は右肩上がりだ。なぜこんなことが可能になっているのかというと、大型機械を導入して作業の効率化が進んでいるからだ。

 これは一見すると、何やら素晴らしい進歩のように感じる。ただ、どんなに素晴らしい工場機械をそろえてもメンテナンスをするのは人間だ。そこが足りなければ、「巨大な機械を1人で扱う」という状況が増えるということなので当然、「はさまれ・巻き込まれ災害」も増えていくというワケだ。

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