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建築業界「休めない、人手が足りない」 2024年問題を“さらなる苦境”にしないためには

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年5月30日 7時0分

 高齢人材はいずれ引退するため、次世代を担う若手人材を確保しやすい労働環境への改善が急務なのである。

●働き方改革を阻む、業界ならではの「2つの要因」

 一方で、業界ならではの「働き方改革を阻害する要因」もまた存在する。

 その一つは「週休2日制導入のハードルが高い」ことだ。先出の資料にもあった通り、現状週休2日制を実現している事業者は全体の約2割程度にとどまっている。その理由はさまざま存在するが、業界で広く採り入れられている「日給月給制」は原因の一つといえるだろう。

 日給月給制は、1日を計算単位として給料が定められているため、労働日数が多い月は給料が増え、労働日数が少ない月は給料が減る。したがって日給月給制のまま週休2日制になると、稼働日が純減し、収入も大きく減ってしまうこととなり、現場から反対の声が挙がるケースが少なくない。

 現場が動いている以上施工管理なども現場せざるを得ないため、実質的な休日出勤が常態化しているという構造だ。

 もう一つの業界ならではの要因は「多重下請け構造」である。IT・システム業界などでも見られるが、多重下請けによって中間マージンが差し引かれると、利益が残らず十分な人員を配置することが困難となる。

 結果的に一人当たりの負担が大きくなり、長時間残業・休日出勤の元凶となるうえ、指揮系統の複雑化、作業効率低下なども、労働環境の悪化につながってしまう。

●実際に、成果が出た取り組みは……

 企業規模を問わず各社とも知恵をしぼって2024年問題に立ち向かおうとしている。実際に残業時間削減や採用定着に明確な成果が出た取り組みとしては、次のようなものが挙げられる。

・ウェアラブルカメラやドローン、設計支援システム等を活用したデジタル化・システム化推進により、作業の進捗管理や現場監視、事務作業の効率化を実施

・Web会議活用による移動時間削減

・マニュアルやスキルマップ、手順書作成による業務平準化と属人化解消

・ベテラン作業員の業務を動画共有することによる技術向上と生産性向上

・取引先への協力要請による無駄作業・残業削減

・下請け構造から脱却し、自らが元請けとなって、工期と利益をコントロール

 ただしこれらの施策を実現するためにも、発注側である元請企業の協力は不可欠である点では運送業の構造とも同じである。

 少なくとも適正な工期設定は必要となるし、残業でカバーできない分の人件費負担を施主に要求する必要も出てくるだろう。そうなると建築費用は現状より大幅増となることは明白であるが、業種そのものを持続可能にしていくためにも、社会全体で受け容れなければならないテーマであるといえる。

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