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カツオが食べられなくなる? 水産資源の「獲りすぎ」防ぐサプライチェーンの最前線

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月10日 6時15分

 そして非営利で環境保全に取り組むWWFの呼びかけに応じ、3年間にわたりその助言を入れながら認証の取得を目指したことは、多様なステークホルダーによる連携の好例といえる。

●ビジネスにおけるサステナビリティ確立の先例として

 この水産業界における画期的な取り組みが報道された同月27日、同じくWWFの支援のもと、MSC漁業認証の取得を目指していた、大洋エーアンドエフによるカツオ・キハダのまき網漁業がMSC漁業認証を取得。日本市場における熱帯マグロ漁業は、さらにサステナビリティを高めることとなった。なお、同社の2023年の漁獲量はカツオが約1万7900トン、キハダマグロが約4700トンだ。

 MSCによれば、これらの認証の実現によって、対象のマグロ・カツオ漁船による漁獲量は100万トン未満であった2017年から2022年度には260万トン以上に増加。MSCのラベル付きマグロ・カツオ類の製品販売量は2022年までの過去5年間で約3倍に増え、過去最高の17万8000トンに上った。

 さらに、これらの認証の取得に動いた、明豊漁業、共和水産、大洋エーアンドエフの3社は、他にも漁業資源の持続可能な利用に向けて積極的に取り組んでいる。

 その一例が、世界最大の熱帯マグロ産地である、中西部太平洋のマグロ漁業を管理する国際機関「WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)」に対する要望だ。2020年以降、3社はWWFのような環境保全団体や他の水産ビジネスに関係する企業と連名で、WCPFCに加盟する各国政府に対し持続可能な熱帯マグロの漁業管理の強化を訴求。目先の利益をもたらす漁獲可能な総量の増加を求めるのではなく、水産業の将来を見越した資源と漁業の持続可能な管理強化に向けた働きかけに参加した。

 こうした一連の取り組みによって、企業による海の生物多様性の保全にも貢献する取り組みが、生産、流通、販売のプロセスにおいて、確かな形になろうとしている。まさに水産業界による、SDGs(持続可能な開発目標)の「12.つくる責任つかう責任」「14.海の豊かさを守ろう」「17.パートナーシップで目標を達成しよう」に通じたビジネスの在り方といえるだろう。

 これらの取り組みは、水産業界のみにとどまらない。大手水産会社だけでなく、その製品を扱う大手小売業界より、持続可能な製品の調達を求める動きがあったために実現した経緯がある。より広いビジネス分野におけるサステナビリティの浸透に関係しているのだ。

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