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PBRをいかに高めるか レゾナック、NECの好例から探る

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月14日 7時20分

 ROICを高めようとしたとき、日本企業が直面しがちな壁は大きく2つある。

 1つは、組織のサイロ化が招く部分最適化と行動品質のバラツキである。いかに美しいROICツリーで個別組織・機能のKPIに分解したとしても、各KPIを個別に高めることが、必ずしも全社のROICを高めるわけではない。一時高められたとしても、リバウンドしてしまう場合も多く、個人による行動品質のバラツキも無視できない。

 これを突破し全体最適に至るには、全体のボトルネックを優先的に改善するのはもちろんのこと、いかにKPI達成のアクションアイテムの再現性を高めるかが鍵である。これはまさに、個人のバラツキを是正し、テクノロジーを梃子(てこ)に企業オペレーションを抜本的に変革するDXを成果志向で進めることに他ならない(図1)。

 もう1つの壁は、日本企業で強かったミドル層の不活性化が叫ばれて久しいが、これが招く戦略実行不全とリスク回避病である。いかにオペレーション業務のテクノロジー代替を進めても、残る戦略・企画業務を進めるのはヒトである。「DXと人的資本経営は表裏一体」と言われる所以であるが、戦略実行の要となるミドル層の腰が引けていては、大きな果実は得られない(ローリスクにはローリターンしかついてこない)。

 これを突破するには、戦略実行を企業文化に埋め込むための「自信」の醸成が鍵である。もちろん、不活性化したミドル層がトップから「リスクを取れ」と号令を掛けられただけでそう動けるわけでもないので、DXやM&Aの投資枠確保や海外市場での拠点づくりなど、リスクテイクできるよう御膳立てをするのは経営トップの仕事である。

化学メーカー、レゾナックの好例

 化学メーカーのレゾナックが先端半導体の技術開発を目指し、米シリコンバレーにR&D拠点(2025年度運用開始予定)を新たに設置することを決断したのはその好例だ。

 つまり、ミドル層に「自信を作る場」を設けるのだ。イノベーションと言えばシリコンバレーであるが、その懐に入り、いざ知ってみれば恐れるに足らず、自分たちがこれまでに築いた強みを正しく生かせば十分に戦える、事業構造転換は果たせる、という手触り感を得られる場合も少なくない。

 ミドル層覚醒のために、先鋭的な企業に資本参加するなどしてオペレーティングモデルに「見て触れて学ばせ」、思考を進化させることも有効だ。例えば、とある電機メーカーでは、停滞していた新規事業をテコ入れするため、エクスペリエンスデザイナーを起用して世界中のエクストリームユーザーに徹底的にインタビューさせ、それを基に将来的な顧客体験の世界観を構築した。これにより、事業推進メンバーに手触り感のある目標と、「われわれにもできるのだ」という自信を与えたことをきっかけに、事業が上向き出したのだ。

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