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PBRをいかに高めるか レゾナック、NECの好例から探る

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月14日 7時20分

 これを突破するには、財務・非財務を「統合」した成長投資効果の見える化を早期に始めることが鍵である。過年度の相関を見るだけで「投資効果は証明できそうにない」「投資効果の見通しは出したくない」と諦める会社は多いが、投資効果の見える化はデータと分析の積み重ねが命なので、今すぐ始めねば、いつまでたってもできないことになる。試行錯誤を繰り返して投資効果の精度を高めていく努力は見せていくべきだ。仮に投資効果の見通しが外れたとしても、高リターンの投資には高リスクが付きものなのだから、それはそれで組織としての学習フィードバックに取り入れていけばよいのである。

 例えば、ソフトウェア品質保証のリーディングカンパニーであるSHIFTのIR資料は圧倒的な「解像度の高さ」で有名である。どのような施策を行った結果、どの指標がどう変わったのか(過去の説明)、今後、どの指標を伸ばすために、どのような施策を行っていくのか(未来の説明)、が詳らかになっており、「解像度の高い施策」と「定量的な成果」がセットで開示されている。見せ方を工夫するだけでなく、実態として日頃からかなり解像度の高い施策・KPI管理を行っていないとできない業である。

●PBR向上プロジェクトに命を吹き込む経営者の覚悟

 以上のように、高PBR実現に向けたアプローチは大きく4つでまとめられる(図4)。ただし、それらの実効性を上げるためには、大前提として、CEOを要とし、CFOやCDO、CHRO、CTOなどのCxOが一枚岩で動かねばならない。

 事業の垣根を越えてリーダーシップを発揮し、どこにどれだけ投資するのかの議論を活性化し、各部署の活動がバラバラで独立したものでなく、目標の達成に向けて足並みをそろえた相互に補完し合う関係を開発するスタンスを貫く――。これを経営者は肝に銘じておくべきである。

 以上、これまで3回にわたって、なぜROIC経営が今まさに求められているのか、PBRが高いとはどういうことか、いかにPBRを高められるのかを説明してきたが、いずれも「言われてみれば当たり前」のことかもしれない。

 しかし、これらを実際にやり切れている企業は少ない。とかく「PBR向上に向けた課題はすでに認識しているのであとは粛々とやるだけ」という企業は多いが、ROICツリー上に論理的に整理されたアクションを粛々と潰し込むだけでROICが向上するなら苦労はない。期限を決めて、経営者の強い覚悟のもと、各社の重点課題に対して処方箋を集中的かつ抜本的に施さなければ、安々とPBRは向上するものではなく(投資家は見透かす)、今回の連載の内容が、皆さまに何らかの気付きを与え、日本企業のPBR向上に少しでも貢献できれば幸いである。

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