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“賃上げできない会社”がやるべき「半分ベースアップ」とは? 給与のプロ直伝

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月17日 8時30分

●「半分ベースアップ」を行う

 しかし今まで新卒を定期的に採用してきた会社が、今年だけ空白にするわけにはいかない事情も理解できます。若い人が入ってこなければ、物事に対する新しい見方や考え方、異なる視点などが組織に入ってきません。

 全社的な賃上げをする原資がない場合、2つの方法が考えられます。1つは、誰の賃金も減らない「新しい賃金=現在の賃金×α+b円」というベースアップをすることです。旧賃金が低い人は大幅に賃金増、旧賃金がすでに高い人の増加率は小さめになります。

 仮に、

・高卒初任給=18万円

・実在者最高賃金=50万円

であるとします。この状態から、

・高卒初任給=23万円(5万円アップ)

・実在者最高賃金=50万円(据え置き)

に変えたいとします。

 この数字を実現したい場合、両者だけでなく全ての人の賃金を、おおむね「新しい賃金=現在の賃金×0.84375+7万8125円」という形で変換します。高校卒初任給は23万円に上がり、実在者最高賃金は50万円で据え置かれます。

●計算式

 0.85375と7万8000円という数字の根拠は、少し算術的な話になりますが、次の通りです。

(1)18万円×A+B=23万円

(2)50万円×A+B=50万円

をともに成り立たせるAとBの値を求めます。

 (2)式から(1)式を引くと「32万円×A=27万円」です。これを成り立たせるAは27÷32で0.84375です。

 次にBを求めます。(1)式でも(2)式でも、どちらでも良いのですが、(1)式のAに0.84375を当てはめてみます。

18万円×0.84375+B=23万円

Bは23万円-18万円×0.84375で7万8125円です。

 Aに0.84375、Bに7万8125を入れると、(1)式も(2)式も、ともに成り立ちます。

 もちろん「×0.84375+7万8125円」という数字は、もともとの賃金と、変換後のターゲットとする賃金がいくらであるかによって異なります。常にこの数字があてはまるわけではありません。

 この方法は図1の通り、賃金カーブを、実在者最高賃金である50万円のところを支点にして時計回りに回転させることです。もともとの賃金が高い人ほど上がり幅が小さくなりますが、最高額の50万円の社員を除き、全員が上がります。新旧賃金の逆転も起こりません。

 ただしこの方法は、全員の賃金を5万円引き上げる場合に比べて、半分とはいえ原資を必要とします。全員が等しく底上げされるわけではなく、ベースアップの半分しか社内平均賃金が上がらないので、筆者はひそかに「半分ベースアップ」と呼んでいます。

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