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“賃上げできない会社”がやるべき「半分ベースアップ」とは? 給与のプロ直伝

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月17日 8時30分

 大学生が何を重視して就職先を選んでいるかについては、熊本学園大学の米田耕士准教授が研究しています(※3)。これによると、賃金は確かに重視されていますが、初任給ではなく社員平均年収を見ています。残業手当や賞与も含んだ年収の、ベテラン社員まで含んだ平均値です。平均年収が1%高くなると、応募倍率は1.167%高くなります。

(※3)『大学生の就職活動における大企業志向は何が要因か―企業別応募倍率の決定要因分析を通して』(『日本労働研究雑誌』2015年5月号所収)

 残業の少なさも重視されています。残業が少ない業種ほど応募倍率が高くなる傾向はあるものの、同じ業種内だと残業時間で大きく応募倍率に差が付くことは少ないようです。

 知名度は一定の影響こそあるものの、賃金に比べればわずかなものにとどまります。知名度の指標として広告宣伝費を利用すると、広告宣伝費が1%多くなっても、応募倍率は0.058%しか高くなりません。社員平均年収に比べれば、実に20分の1の影響しかありません。

 女性の採用実績がある企業は応募倍率が高くなる傾向があります。女性を採用することに消極的な企業はあり、そうでない企業には多くの女子学生が応募するからです。

 企業規模は応募倍率にそれほど影響を及ぼしません。社員平均年収が同じであれば、企業規模が大きくなっても応募倍率はあまり変わりません。

 要するに学生にとって企業の大きさや知名度そのものはあまり重要ではなく、平均年収が重要であり、社員平均年収が高い会社がたまたま大企業や有名企業であるだけのことだといえます。

 社員平均年収がかくも重要であれば、初任給だけを引き上げることはもとより、調整手当を利用する方法も、新卒の応募倍率を上げるに際してほとんど効果がないということになります。

 そうであれば、造語で恐縮ですが全社的な賃上げに続く次善の策は「半分ベースアップ」であると言えます。

(神田靖美、リザルト株式会社代表取締役)

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