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“賃上げできない会社”がやるべき「半分ベースアップ」とは? 給与のプロ直伝

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月17日 8時30分

●調整手当を利用する

 もう1つの方法は調整手当を使うことです。高校卒初任給を18万円から23万円に引き上げたい場合、基本給は据え置いて、新入社員には5万円の調整手当を支給します。既存の社員と逆転が起きないように、既存の社員でも基本給が23万円に満たない人には、その差額をやはり調整手当として支給します。基本給が20万円である人には3万円の調整手当を支給します。

 こうすれば、少なくとも賃金の逆転は起こりません。調整手当をずっと温存しておくのでは基本給と区別する意味がないので、毎年1万円ずつ減らすというような形で段階的に解消します。

 上記の例では5万円も初任給を上げるという極端な設定にしましたが、実際には2023~2024年の間に、初任給相場は5万円も上がってはいません。産労総合研究所の「2024年度決定初任給調査中間集計」によると、高卒初任給は前年に比べて1万43円増加しています。調整手当を利用する場合、1万円程度の金額になるでしょう。これを4年で解消するとしたら、毎年2500円ずつ減額することになります。

 調整手当は2500円ずつ減額されますが、新卒を採用するような会社であれば、賃上げが毎年あるはずです。日本労働組合総連合会(連合)の集計によると、2024年の、従業員300人未満の中小企業の賃上げ額の平均は約1万2000円です(※2)。基本給が1万2000円上がれば、調整手当を2500円減額されても、差し引きで賃金が9500円上がります。

(※2)連合のプレスリリースより。2024年5月8日中間集計、集計組合員数による加重平均。

 ただし調整手当を利用する方法は、初任給引き上げの恩恵を享受できるのは入社後数年間にすぎず、生涯賃金にはほとんど影響しません。聡明な学生なら、このことにすぐ気付くはずです。

●初任給は重要か

 そもそも高校生や大学生は初任給を重視しているのでしょうか。確かに就職人気企業には初任給が高い会社が多いです。2023年のデータですが、「日経マイナビ」による大学生就職人気トップ10の企業の大卒初任給は平均26万2608円でした(筆者計算)。母集団を特に就職人気企業に限定したわけではない、産労総合研究所の「2023年度決定初任調査」にみる大卒初任給の21万8324円を20%あまり上回っています。

 しかし当然のことながら、学生は初任給だけで応募先を選んでいるとは限りません。将来享受できるであろう賃金や賞与、企業ブランド、企業規模、残業の多寡なども多かれ少なかれ考慮しているはずです。

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