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「あえて非正規」増加 ウラに潜む“由々しき問題”とは?

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月23日 7時30分

 「正規の職員・従業員の仕事がないから」の比率は2013年の17.9%から上昇し、2018年以降は「自分の都合のよい時間に働きたいから」に次いで2番目に高い理由となりました。つまり、この10年の間に「正規の職員・従業員の仕事がないから」と回答した人が減少した数以上に、正社員就業者の数が増加したということです。

 以上から「正規の職員・従業員の仕事がないから」を理由に非正規社員として働く人の比率が減少したのは、働き手の価値観が変化したというよりも、正社員になってその希望が満たされた人が増えたことが大きく影響していると考えられます。

 さらには、正社員の中にも、職場から強い束縛を受けることなどが負担で辞めたいと考えながら就業している不本意型正社員が一定数います。それが、有効求人倍率が1倍を上回り続け、人口減少が相まって売手市場になったことや、失業率が安定的に3%を下回り続けて失業の心配が薄れてきたことなどから、思い切って非正規社員へと移りやすくなった面もあるかもしれません。

 働き手の価値観はもともと多様だったものの、個々の価値観に沿った働き方を選ぶ難易度は高いものがありました。それがこの10年で労働市場が変化し、正社員を望む者は正社員に、非正規社員を望む者は非正規社員により就きやすくなり、徐々にではありますが誰もが望む働き方を選べる環境へと近づきつつあるように感じます。

●「あえて非正規」の陰に潜む“年齢の壁”

 ただ、この流れ自体は望ましいことに違いないものの、あえて非正規の比率が増えている陰に隠れた由々しき問題があります。先に見た通り、「正規の職員・従業員の仕事がないから」の比率は34歳以下だと2桁以上下降していますが、35歳以上の層では下降幅が1桁にとどまり、年齢層が上がるにつれて下がり幅が小さくなっていきます。

 一方、正社員就業率はそれに反比例するかのように34歳以下の上昇率が高く、35歳以上は低くなっています。さらに45歳以上は正社員就業率が70%を切っており、55~64歳は上昇幅こそ3.6ポイントと高めではあるものの、定年年齢をまたぐこともあってか50%台に留まっています。65歳以上にいたっては正社員就業率が30%にも届かず、この10年の間に下降してしまいました。

 日本の労働市場全体を見渡すと、あえて非正規が増加傾向にあり、自らが希望する働き方を選べるようにはなっていたとしても、恩恵を受けているのは34歳以下の若年者に偏りがちです。特に45歳以上の層で見劣りします。あえて非正規が増えている陰には、表立っては見えにくい“年齢の壁”が潜んでいるようです。

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