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「富士山ローソン」問題はどうなった? “イタチごっこ”が続く理由

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月5日 6時30分

 といっても、役所がWebサイトをつくって情報提供するなんてことをやってはダメだ。中国人観光客には彼らが情報源にしている中国人インフルエンサーがいるし、米国人観光客には彼らが情報源にしている米国人のインフルエンサーがいる。

 それぞれの国の観光客が情報源としている人たちにも協力してもらう。皆さんもどこかの国に行って観光をする時、政府や富士河口湖町のような地元自治体のWebサイトやSNSを参考にするよりも、インフルエンサーやネットの口コミを参考にするはずだ。

 自分たちがやっている当たり前のことを、外国人観光客にも適応すればいいだけの話だ。

●本来は国がやるべき仕事

 という話をすると「そんな大掛かりな情報発信は、河口湖町のような自治体では難しいのでは?」という意見が聞こえてきそうだが、まさしくそれが日本のオーバーツーリズムの元凶だ。

 今お話をしたように戦略的に新しい観光地を創出して、外国人観光客たちの動線を変えていくゾーニングは、1つの自治体がやれるようなものではない。今回でいえば、富士山周辺の人の流れを見て富士山コンビニへの誘導を考えていくので、富士宮市や富士吉田市など自治体の垣根を超えて、地域観光を俯瞰(ふかん)していく視点が必要不可欠だ。

 つまり、これは本来は日本政府観光局がやらなくてはいけない仕事なのだ。

 しかし、残念ながら日本の観光行政は縦割りなので、個々の自治体が細切れの観光戦略を打っている。政府観光局には口を挟む権限もないし予算もない。だから結局、オーバーツーリズムも「自治体の頑張り」という根性論で解決するしかない。

 世界各国から人々が訪れる撮影スポットができたのだから、もうちょっと建設的な議論をしてもいいはずだが、とにかく「クサイものにフタ」と言わんばかりに「農業用の遮光幕」で撮影禁止にしてしまう。

 日本を代表する観光資源のオーバーツーリズム対策にしてはあまりにセコく感じてしまうのは、日本の観光政策がお粗末だからなのだ。

 そして、このお粗末さが世界に発信されてしまうことも、われわれは肝に銘じなくてはいけない。

●海外メディアの反応

 今回、富士山ローソン問題や黒い目隠し幕について、米CNNなど海外メディアが報道している。もちろん、親日家たちは同情するし、日本の肩を持つだろう。だが、中にはこのような対応を良くないと考える人たちもいる。例えば、『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員のレジス・アルノー氏も、『「富士山を黒幕で隠す」日本のダメダメ観光対策』(東洋経済オンライン 2024年6月)という記事で今回の対策を痛烈に批判している。

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