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「もっと働け」と強いる“女性活躍推進”のむなしさ 男女の格差なぜなくならない?

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月26日 8時15分

 3つ目は、管理職比率の差です。先述のプロジェクトチームに出された資料では、2023年の女性管理職比率が課長級で13.2%。この数字を裏返すと、課長級の男性比率は86.8%ということになります。役職者は総じて給与水準が高いため、管理職に占める割合の差は、そのまま男女の賃金格差の要因となりえます。

 最後は、就業時間の差です。賃金構造基本統計調査を確認すると、所定内の労働時間と残業時間の合計は男性の正社員が月に182時間、非正社員は174時間。一方、女性は正社員が172時間、非正社員が166時間なので正社員で月10時間、非正社員で8時間、男性より女性の方が少なくなっています。

 単純に考えると、これら4点について女性を“男性並み”にすれば、男女間の賃金格差を埋めることができます。つまり、女性の正社員数を増やして男性との比率を同等に引き上げ、結婚などのライフイベントがあってもフルタイム正社員として働き続けられるようにし、管理職比率や就業時間も男性と同程度にするということです。

●女性活躍で“男性並み”求める違和感

 ところが、それを阻む大きくて分厚い壁があります。家事や育児といった、家庭に費やす時間や労力などの工数です。

 1980年代までは専業主婦世帯の方が多かった状況が2000年以降は逆転し、いまでは兼業主婦世帯の方が2倍以上多くなっています。そのことが、家庭全体の総工数を増加させました。工数を軸に男女の典型モデルを比較してみると、その影響が見えてきます。

家庭モデルごとに工数を可視化すると……

 専業主婦世帯の夫は仕事専業です。実際には家庭ごとに違いがあるものの、大まかなモデルで考えると専業主婦世帯の夫は、時間と労力といった工数を100%仕事に注ぎ込んできました。一方、専業主婦である妻は工数を100%家庭に注ぎこみます。

 夫婦が仕事と家庭にそれぞれ100ずつの工数をかけているとすると、夫婦の合計工数は200です。ところが、いま全体の3分の2以上を占める兼業主婦世帯では、専業主婦だった妻にパートなどの仕事に従事する負荷が加わりました。

 だからといって、家庭にかかる工数が変わるわけではありません。冷凍食品が充実し、食洗器やロボット掃除機などの便利なツールが出てきているとはいえ、家事や育児、介護など家庭には365日休むことなくやらなければならないことが盛りだくさんです。妻がワンオペで家庭を切り盛りし、そこに付加されるパートなどの仕事工数を夫の半分程度とする兼業主婦世帯モデルをグラフで表すと、以下のようになります。

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