1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

勢いづく出社回帰 テレワークは消えゆく運命なのか?

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月5日 6時35分

テレワーク不可が生むロス

 最後5点目は、テレワークできない状態がこれまでになかったロスを生むようになったことです。テレワークが現実的に選択可能な働き方となり、テレワークできる環境なら有益に使えるはずの時間が、ロスと見なされるようになってきました。具体的には、勤務中の移動時間や通勤時間などです。

 社内会議であっても、開催場所の階が違ったり、別のビルまで移動しなければならない場合もあります。社外との打ち合わせであれば、公共交通機関などを使っての移動にかなりの時間を要することになります。しかし、ビデオ会議システムを使って事足りる場合、それらに費やされる時間はロスです。その時間を他業務に使ったり残業削減に充てれば、金銭的なメリットが生まれます。

 従来の認識だと、出社前後の通勤時間は勤務時間とは見なされず、給与支払い対象ではありませんでした。しかし、在宅勤務が出来れば通勤時間を生活や副業などの時間に充てて有効に使うことができます。テレワーク不可能な職務を除いて、テレワーク環境を整えない状態が不当な拘束時間を発生させる可能性も否定できないだけに、通勤などに費やす時間が機会損失となり、社員の権利侵害や賠償対象と見なされるケースも出てくるかもしれません。

●出社回帰 vs. テレワークの最適化……生き残るのは

 出社回帰が進んでいるといっても、既に働き手の意識の中や職場内のあらゆる場面においてテレワークは溶け込んでいます。また、テレワークだとリアルの場に集うのと同じようなグルーヴ感は得られないとしても、それがなければならないかどうかについては、職場の考え方によって判断が分かれるところです。中にはテレワーカーのみで事業運営している会社もあります。

 まだ携帯電話もなかった時代には、職場が不在の際に留守番電話に切り替えておいたりすると「機械に応答させるなんて無礼千万だ!」と顧客からおしかりを受けるようなこともありました。しかし、いまではメールやチャットなどで用件を済ませたり、ビデオ会議を用いて打ち合せすることなどへの抵抗感はかなり薄まっています。

 新しいツールの出始めや新しい就業環境へ移行しつつあるころは、これまでの常識にとどまり続けようとする心理的な慣性の法則が働き、変化に抵抗を感じやすくなりがちです。テレワークに関してもまだ、心理的な慣性の法則が働いている可能性があります。

 しかし、今後のさらなる技術発展やテレワーク環境への慣れが進んでいく中で、職場や働き手の認識がこなれていけば、心理的な慣性の法則からは徐々に解放されていくことでしょう。また、再びコロナ禍が想定されるような事態が起きれば、危機管理意識が高まってテレワークの意義が改めて見直されることだってあり得ます。

 そのような場面に遭遇してから動いていては、コロナ禍の教訓を生かしたことにはなりません。最も大切なことは、必要な時に最適な働き方へと自在に切り替えられるよう環境を整えることです。それをしないまま、ただ出社回帰するだけの会社とテレワークの最適化を進める会社の間には、日に日に大きな差が開いていくことになるでしょう。

【筆者:川上敬太郎/ワークスタイル研究家】

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください