「ニッセン売却」が象徴するセブン&アイEC構想の大失敗 カタログ通販に残された利用価値とは
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月12日 8時0分
ニッセン全盛期の頃は、大きな小売店に行くとレジの周辺や出入り口に、分厚いカタログが積まれていて、無料で持ち帰られるようになっていた。こうして新規顧客を開拓しつつ、既存の顧客にはカタログを送付することでリピート購入を獲得するという手法で、ニッセンは2014年12月期には2084億円を売り上げていた(図表2)。
ニッセンは2013年12月にセブン&アイと資本業務提携し、2016年11月には完全子会社となっている。2011年以降の収益の落ち込み、2014年から続く売上減から分かるように、ニッセンのビジネスモデルはうまくいかなくなっていた。この背景はいわずと知れた通販のECシフトであり、注文するのも探索するのもネットやスマホ経由で、というのが当たり前になってしまったからである。
こうなると、ニッセンが大量に無料配布する分厚いカタログのコストは無駄になる。既存顧客に送付しても反応が少なくなり、結果として採算が合わなくなった。そして、損益が均衡するところまでカタログの縮小とECシフトを進めることで、400億円弱の売上規模でなんとか踏みとどまっている、というのが現状である。
ちなみに経済産業省の調査によれば、EC物販市場規模(コンテンツや旅行などのサービス取引は除いて)は、2005年の1.7兆円から2022年14兆円へと8倍以上に拡大している。一方、この流れの中で、カタログ通販市場は急速に縮小へと向かいつつあるといえるだろう(図表3)。
●カタログ通販御三家、残る2社の動向は?
かつて総合カタログ通販企業といえば、ニッセン、千趣会、セシールが御三家と呼ばれていた。残る2社のその後もみてみよう。
セシールはニッセンよりも少し早く、2000年代初頭から業績の落込みが顕著になっていく。2006年にはライブドアに買収され、2010年にはフジ・メディア・サービス(ディノス)の完全子会社となり、上場廃止に至った(図表4)。現在はさらに株主が変わり、上場家電量販店ノジマの子会社となっている。
千趣会についても、2012年12月期以降は減収が続き、直近の売り上げは492億円まで縮小した(図表5)。ちなみに千趣会は2020年、JR東日本と資本業務提携(出資比率は議決権ベースで12.46%)し、ECモールやJREポイントでの連携を行っている。このように、かつてのカタログ通販御三家はその存在感を失い、他社との連携で活路を見出そうとしているのが現状だ。
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