「ニッセン売却」が象徴するセブン&アイEC構想の大失敗 カタログ通販に残された利用価値とは
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月12日 8時0分
ECという新たなチャネルが浸透していく中で、カタログ通販大手は次々と存在感を失っていった。唯一、ECにシフトしない顧客層=高齢者に特化してそのニーズに応えることで、ベルーナは業績を保ち続けたが、それでも10年ほどで通販部門は採算が合わなくなった。特定年代に特化したマーケティングに成功しても、その集団は時の流れの中で消費の世界から退場していくからである。
団塊世代はECがお好みではなかったかもしれないが、これから高齢者になるバブル世代、団塊ジュニア世代はECが当たり前だ。少子高齢化を前提に、シニア向けのビジネスやマーケティングというのはよく聞くが、年代と世代を混同した認識を目の当たりにすることが少なくない。「高齢者」とは年代を意味するが、その時代により構成している世代が変わっていく。10年も経過すれば、その嗜好(しこう)は全く違うものとなる。「ゆく川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」なのである。
ネットを使わない高齢者は少しずつ買い物の主体から引退し、カタログ通販へのニーズは確実に減っていく。その点、歯愛メディカルの歯科医院関係者というのは、時代を経ても入れ替わりつつ顧客でいてくれる可能性は高く、コア顧客の安定性は極めて高い。今後は、こうした特定顧客層をつかんだEC企業が、業界におけるM&Aの買い手として名乗りを上げることになるかもしれない。
著者プロフィール
中井彰人(なかい あきひと)
メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。
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