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なぜ、キャラクター商品は目を引くのか? 裏にある2つのマーケティング手法

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月5日 6時15分

 ところが、その後の2022年から、同社は7期続いた減収減益をV字回復と呼べるまでに成長させました。この背景には、2020年に社長へ就任した辻朋邦氏が主導した組織改革により、マーケティング専任部署を設立したことがあるといわれています。

 それまでサンリオは、ハローキティの大ヒットによりライセンス事業の営業がしやすく、長くマーケティング専任の部署がありませんでした。マーケティング部署が設立されてからは、しっかりとキャラクターのポートフォリオを作成し、長期的な観点でブランディング施策が検討されるようになったそうです。

 また、辻社長のインタビューでは、もう1つの大きな組織改革として、経営チームへの若手社員の登用も挙げられています。デジタル化に伴うエンターテインメント業界の急速なトレンド変化についていくため、70代の経営メンバーの退職を機に経営チームの平均年齢を15歳も引き下げたそうです。

 ユーザー参加型のイベントやキャラクター開発、Web3、教育コンテンツといった展開を始めており、これが成功すれば、さらなる成長も想定されます。

●出会いから寄り添い続ける一貫したユーザー体験を

 筆者がキャラクター人気に大きく支えられた「きせかえサービス」を運営していた当時、上司からこんな例え話を聞いたことがあります。「普段から弁当を持って行く人にはキャラクターの弁当箱が売れる。一方で、弁当を持つ習慣がない人にはキャラクターがついているからといって弁当箱は売れない」

 キャラクターは、商品を選んでもらう理由やその商品への愛着にはなれど、買う必要がないものを買う理由にまではならないということです。

 キャラクターの視覚吸引効果によって、その商品に一時的に興味を持たせることはできます。ただ、その商品自体に十分な魅力がなくては、購入はもちろんファンとして継続的な購買につなげるのも難しいでしょう。さらに、キャラクターの人気は一過性であり、世代やトレンドの変化を考慮すると、その効果は良くも悪くも変化しやすいものであると捉える必要があります。

 キャラクターに限らず、視覚吸引効果の高いものがマーケティングに活用されているケースは多く見受けられます。しかし、一時的な視覚吸引による購入を期待するのではなく、商品を使い続け、ファンになるほどの愛着を持ってもらうためにはどうすべきか。マーケティングフェーズと一貫した商品自体の魅力創出や長期的に接点を継続させる体験設計が求められます。

 マーケティング施策とロイヤルティ施策を切り離して考えるのではなく、ユーザーを起点にキャラクターの接点と関係作りを考えることが、安定した売上向上につながることは間違いありません。

●著者紹介:秋野比彩美

株式会社グッドパッチ UXデザイナー。ヤフーでUIデザイナーとしてキャリアをスタートし、トップページの事業責任者を経験した後、大手通信企業のグループ会社でUXデザイナー兼組織マネージャーとして、クオリティー管理、UXデザイナーの採用と育成に取り組む。グッドパッチにUXデザイナーとして入社後は、インサイトリサーチ、ユーザーリサーチ領域をリードしている。趣味は飼っているうさぎを愛でながら、ビールを飲むこと。

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