流浪のクルーズトレイン「THE ROYAL EXPRESS」が静岡、浜松へ JR東海に観光列車の幕が上がる
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月15日 7時30分
そして2024年は、伊豆急行線を営業運行する「THE ROYAL EXPRESS」はない。伊豆急行は車両基地として「THE ROYAL EXPRESS」を送り出し、迎えるだけだ。
伊豆急沿線の観光業界は、これを寂しいと思わないだろうか。そこがちょっと気になるけれど、東急によると、もともと伊豆急行沿線の観光シーズンは、JR東日本の特急「踊り子」が増発されるほか、関東各地からの臨時列車も入ってくるため、「THE ROYAL EXPRESS」を走らせる隙間がなかったという。まるで阪神甲子園球場のグラウンドを高校野球大会に譲る阪神タイガースのように、「THE ROYAL EXPRESS」は遠征するしかなかった。北海道クルーズの背景にはそんな事情もあった。そして東急にとっては、これが観光列車遠征ビジネスのヒントになった。
●観光列車を持たないJR東海
JR旅客会社のなかでJR東海だけが、これまでクルーズトレインを経験していない。それは東海道新幹線という「国の背骨」を預かる責任ゆえのことかもしれない。在来線にも投資しているけれども、在来線は生活路線という位置付けだ。観光列車にまで手を出すゆとりがない。
JR東海が内装まで専用で作った観光列車は過去にあった。国鉄から継承したお座敷客車、欧風客車ユーロライナー、JR東海が発足してからはキハ80系改造のハイデッカー車両「リゾートライナー」、165系電車改造の「ゆうゆう東海」、14系客車を改造した「ユーロピア」などだ。それらはすべて臨時列車や団体列車に使われたけれども、全て2000年までに引退している。
過去に小田急ロマンスカーと共同運行し、2階建て車両を連結した371系「あさぎり」もあったけれども、2012年に運行を終了。2階建て車両は廃車となり、残った車両は富士急行に譲渡された。
現在の「観光列車」といえば臨時急行「飯田線秘境駅号」が挙げられるけれども、車両は特急形373系を無改造で使ったから、臨時列車の域を出ていない。
各地の観光列車がローカル線の活用策として作られた。その経緯を振り返れば、JR東海は観光列車に力を入れる理由がなかったともいえる。観光需要は新幹線と在来線特急が吸収していたからだ。観光要素としては、在来線特急に「ワイドビュー」車両を投入し車窓を楽しむ工夫をするなどにとどまった。
そもそもJR東海はJR北海道やJR四国のような経営難ではない。それがなぜ、「THE ROYAL EXPRESS」の乗り入れにつながるのか。
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