流浪のクルーズトレイン「THE ROYAL EXPRESS」が静岡、浜松へ JR東海に観光列車の幕が上がる
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月15日 7時30分
「THE ROYAL EXPRESS」は直流区間用の電車だ。JR北海道は交流電化区間と非電化区間しかないから自走できない。そこで「THE ROYAL EXPRESS」を客車として扱い、JR北海道のディーゼル機関車が引っ張る形とした。屋根上にあるパンタグラフを撤去し、交流区間でうっかり通電させないよう対策した。
車内で使う電力のために、東急はJR東日本から電源車を購入して連結した。電源容量の都合で「THE ROYAL EXPRESS」は8両編成ではなく、3両を間引いた5両編成になった。募集定員は15組30名に限定され、3泊4日が1人当たり85万円からのツアーとなった。8月から約1カ月に5回のツアーを予定していたけれども、コロナ禍の影響で3回にとどまり、2回は翌年に繰り越して、2021年は7回運行した。
伊豆急行の車両を東急が借り上げ、北海道までJR貨物の機関車が引っ張って運んでいく。鉄道会社を総動員したプロジェクトだ。乗客の方も、抽選倍率が平均8.2倍になるほど大人気だった。以来、毎年開催されて、2024年も8月に運行予定だ。
北海道におけるクルーズトレインの需要に自信を付けて、JR北海道は2026年から自前のクルーズトレイン「赤い星」「青い星」を運行すると発表した。キハ143形ディーゼルカーを改造し、デザインは水戸岡鋭治氏が担当する。
●2024年に四国で運行、四国一周クルーズの可能性を探る
もともとはJR北海道を応援する企画だったはずが、毎年続く。もはや応援企画というよりビジネスとして成立しているといっていい。どうも東急は上下分離型の観光列車ビジネスをやりたいようだ。そして東急の次の出張は四国だった。2024年1月から3月まで、四国で「THE ROYAL EXPRESS」が運行された。四国・瀬戸内エリアの観光振興・地域活性化を目的としたプロジェクトで、JR北海道と同様の3泊4日のコースで6回行った。
JR西日本とJR四国の電気機関車を交代で使い、「THE ROYAL EXPRESS」の輸送はJR貨物が行う。こちらもJR各社と東急グループの共同プロジェクトだ。現地のバスとフェリーは両備グループが提供した。
ツアーは岡山から始まり、琴平、松山、今治、バスでしまなみ海道を渡り、瀬戸内はフェリーの貸し切り運行で締めくくる。「THE ROYAL EXPRESS」の走行区間はすべて直流電化区間で、自走も可能に思える。しかし実は、JR四国の電化区間はトンネルが小さく、「THE ROYAL EXPRESS」の車高が限界だった。ここでもパンタグラフを撤去する必要があった。そこでJR北海道と同様に電気機関車が牽引し、電源車を連結した。「THE ROYAL EXPRESS」も5両編成だ。定員も減り、なにかと手間のかかる列車である。
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