国内リテールメディアの問題とは? ただのトレンドで終わらせないために
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月17日 13時30分
リテールメディアの「本懐」とはなにか(写真はイメージ、以下同)
マーケティング業界ではリテールメディア(小売業者が展開する広告媒体)に対する注目が集まっています。
北米市場ではWalmart(Walmart Connect)がいち早くリテールメディアを実践、2019年にリテールメディアを開始してから堅調に拡大し、直近の決算(2023年)でメディア広告の受注額が34億ドル(約5300億円)に達しました。そうした動きを受け、北米市場では2021年ごろからリテールメディアの活用方法を巡る議論が過熱しています。
国内の小売業各社からは新たな収益の柱として見られているリテールメディアですが、国内の実情を見るにつけ「果たしてそれはリテールメディアでやりたかったことなのだろうか?」と思えてなりません。
リテールメディアのあるべき姿を捉えないまま取り組みを進めては、その価値を毀損してしまいかねません。そればかりか近年よく見る、形だけのDXのように単なるトレンドとして消費されてしまい、期待した利得は永遠に得られず、業界も発展していかないでしょう。
勃興期の今こそ、その価値について考えてみたいと思います。
●リテールメディアは救世主か?
冒頭に記した通り、北米における小売業の雄Walmartは自社のリテールメディアによって数千億円規模の売り上げを作り出すことに成功しています。この数字は大きなインパクトをもたらしました。従ってリテールメディアは、小売業者に新たな収益を生むものとして期待されているはずです。
こうした“新たな収益の柱”としての姿が強調され、経営陣の目にとまっています。その結果、急に部署が立ち上がり、メディアの運用経験がない責任者が社内から抜擢(ばってき)され、数千万円の必達予算がつけられてしまう――といった例を複数社から聞きます。
このような背景で立ち上げられた「リテールメディア事業部」が簡単に収益を作り出す方法があります。それは、リテールのバイイングパワーを活用して、メディア出稿費をメーカーから引き出すという方法です。このやり方であれば確かに、リテールメディアを立ち上げたばかりの組織でも、短期的に売り上げを作り出せるでしょう。
●“お付き合い”の金が使われている
私はこれを憂慮すべき事態だと感じています。まず、この方法で増やせる収益には限界があります。バイイングパワーで引き出せるメーカーの予算の多くはいわゆる「流通対策費用」であり、マーケティング全体における広告費ではないケースがほとんどだからです。
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