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農林中金が「外国債券を“今”損切りする」理由 1.5兆円の巨額赤字を抱えてまで、なぜ?

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月8日 7時55分

農林中金が「外国債券を“今”損切りする」理由 1.5兆円の巨額赤字を抱えてまで、なぜ?

(提供:ゲッティイメージズ)

 6月18日、農林中央金庫(以下、農林中金)が2024年度中に含み損のある外国債券を約10兆円分、売却すると明らかにした。

 今期における農林中金の赤字額は1兆5000億円程度となり、赤字幅はリーマンショックを上回る。このニュースは市場に大きな衝撃を与えたが、読者の中には「債券を満期まで保有すれば損失は回避できるのに、なぜ今売却するのか?」と疑問を抱いた方もおられるのではないか。

 農林中金の投資戦略と、背景にある金融環境、そしてバーゼル規制の影響について詳しく解説していきたい。

●低リスク資産の運用が裏目に? 農林中金の運用戦略

 農林中金は、日本の農林水産業の支援を目的とした金融機関だ。農協や漁協などの組合員からの預金を資金とし、主に大規模な法人向けの融資案件や市場での債券運用で利益を生み出している。特筆すべきは、その運用規模の大きさだ。

 農林中金の市場運用資産は現在、約50兆円に達しており、「世界最大級のヘッジファンド」と称されることもある。これをさまざまな投資に振り向け、収益を上げている。運用戦略の特徴は、国債や高信用格付けの社債、地方債など、比較的リスクの低い債券への投資を重視していることだ。

 運用資産の約9割が、債券やローン担保といった比較的リスクの低いものであり、ポートフォリオに占める株式の割合は数%にすぎない。株高の局面にもかかわらず、農林中金が損失を出しているのは、ポートフォリオに占める債券への高依存が裏目に出たためだ。

 農林中金がこのような投資スタイルを採る背景には、農業協同組合の中央金融機関として、安定的な収益を確保する必要があるからだと説明される。では、そんな低リスクなはずの債券投資で大きな損失が出るのはなぜか。

 まず、債券の価格は市場金利の動向に反応する。金利が上昇すると、新しい債券の利回りが高くなるため、既存の低金利債券の魅力が低下し、価格が落ちる。農林中金が保有する多くの債券は、コロナ後のインフレ対策のために行われた各国の利上げによって、市場価格での評価額を大きく下げ、含み損を抱えることになった。

 債券については一般に、満期まで保有すれば額面で元本が償還されるため、発行体がデフォルト(債務不履行)に陥らない限り、持ち続ければ含み損は解消される。しかし、農林中金のような金融機関は、市場価値が下落している状況では、途中売却して損失を確定させることがリスク管理上の戦略として求められる。

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