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非正規の「春闘」、賃上げを勝ち取る意外な戦い方とは? 企業が取り組むべき点も解説

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月22日 7時40分

 「最初に申し入れをしたとき、会社は賃下げを撤回しないと言い、第1回の団体交渉では、本人の賃下げは撤回するが、他の社員は別という回答だった。納得せず、『ストライキをやりますし、社前行動もします』と伝え、実際にストを行ったところ、すぐに全員の賃下げは撤回するとの回答があった。そして第2回目の団体交渉で賃上げを回答してきたが、金額に納得できなかったので、もう1回ストライキを行うことを宣言した。そしてスト決行日の翌日の交渉で前回を上回る賃上げ額回答があったので、ストを中止し、妥結に至った」

 似たような事例は他にもある。小売大手のベイシアでも学生1人の行動をきっかけにストを含む交渉を実施し、アルバイト従業員約9000人の5.44%の賃上げを獲得している。また、居酒屋チェーンとの交渉ではアルバイト従業員の賃上げ率12%を勝ち取っている。最終的に36社のうち16社から有額回答を得られた。

 しかし、疑問も残る。ストを打っても数人程度ではストの威力は小さく、業務を止めることすらできないはずだ。ストライキの効果について青木氏はこう説明する。

 「ストライキを打つことによって報道やSNSで世の中に広がる。そうすると、あの会社でどうしてストライキなのかと、人々はその理由に興味を持つ。去年のようなインフレの中で賃上げしないのは実質賃下げに等しい。組合に正当性があれば人々の共感が生まれる。特に私たちの相手企業はサービス業が多いので、従業員も含めてお客さんも地域の住民が多い。働き手や買う人から悪い評判が出てくれば、人も集められないし、ビジネスもうまくいかない。特にストライキの効果は後者が大きかったように思う」

 ストライキそのものの効果よりも、ストを打つことで企業が社会や地域に関わるレピュテーションリスクにさらされ、それを回避したいという行動が賃上げにつながる効果もあったようだ。

 そして何より大きいのは、少人数の組合員でも未組織の労働者にも賃上げを拡大させたことだ。

 青木氏は「労組の組織率が2割を切っている中で、8割超の労働者は春闘なんて関係ない話に見えてしまう。しかも非正規労働者は会社に労組があっても正社員しか入れない未組織の非正規労働者にも賃上げの恩恵が受けられるということは大きいと思う」と語る。

 そして今年の春闘では仲間がさらに拡大した。「非正規春闘2024実行委員会」には、昨年を上回る23労組の組合員約3万人が参加。賃上げ率「10%以上」を統一要求に掲げ、個々の労組が勤務する120社に対して1月末から2月下旬にかけて要求書を提出し、交渉をスタートした。

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