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非正規の「春闘」、賃上げを勝ち取る意外な戦い方とは? 企業が取り組むべき点も解説

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月22日 7時40分

 しかし「一次回答はゼロ回答ばかりではないが低額回答も目立った。全然納得のいく数字ではなかったということでストに踏み切った」(青木氏)。

 最初に15社の組合員約500人がストを決行した。ストを打っても昨年と同様に交渉を再開し、さらに交渉が不成立に終わると再びストや社前行動を展開し、交渉を続け、三度のストを経て交渉を行うという戦い方は昨年と変わらない。

 非正規春闘実行委員会は5月9日、中間報告をまとめた。それによると、107社の組合が要求を提出し、59社から有額回答を得た。ベイシアがアルバイトについて、平均5.41%の賃上げ回答があり、組合員の大学生の時給が56円上がった。

 また、大手回転ずしチェーンのスシローでは、組合員の勤務先の5店舗で平均10.7%(平均112円)の賃上げ回答を得ている。その他、生協や私立学校の非正規職員に対しても一定の賃上げ回答があったという。

 一方、48社の非正規社員についてはゼロ回答だった。実行委員会が5月1~8日にインターネットで実施した非正規労働者へのアンケート調査結果(回答251人)によると、72.5%が今年1月以降で「賃金は引き上げられていない」と回答し、92.4%が「賃金を上げてほしい」と訴えている。

 非正規春闘実行委員会は引き続き、ゼロ回答企業に対してストライキを含む団体交渉を続けていく方針だ。実行委員会の各参加団体は粘り強い交渉に加えてストライキを併用し、労働者に与えられた労働三権をフルに活用しながら賃上げ闘争を行っている。

●賃上げできない中小企業、対応は

 しかし労働組合からいくら賃上げを要求されても、ない袖は振れない中小企業も少なくない。日本商工会議所・東京商工会議所の「中小企業の賃金改定に関する調査」集計結果(2024年6月5日)によると、2024年に「賃上げを実施(予定含む)」と回答した企業は74.3%。従業員数20人以下の企業では63.3%と全体より11ポイント低かった。「現時点では未定」ないし「賃上げを見送る」企業が30%前後も存在する。

 人手不足の中で賃上げをしなければ人材確保も難しい状況で、最も有力視されているのが「価格転嫁」だ。

 価格転嫁についてはこれまで高騰する原材料価格やエネルギー価格の転嫁を推進してきたが、今年新たに「労務費」の転嫁に向けて内閣官房と公正取引委員会が「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を出し、労務費の転嫁を認めない企業は「優越的地位の濫用」や下請け法違反として摘発する強い姿勢で臨んでいる。

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