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AIで、旬の魚に合う「日本酒」造り 職人の勘を超える発見も

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月18日 6時45分

AIで、旬の魚に合う「日本酒」造り 職人の勘を超える発見も

道の駅なみえに新たに酒造を構えた(画像:鈴木酒造店提供)

 天保年間より酒造りをしていたという鈴木酒造店。祝い酒として地元の漁師に愛される『磐城壽』が代表銘柄だ。

 同社は福島県浪江町で酒造りを続けてきたが、2011年3月11日の東日本大震災で、津波の被害を受け全建屋が流出。唯一残った蔵も、福島第一原子力発電所から直線距離で7キロメートルの場所にあったことから、避難指示の対象になり、立ち入りを禁じられてしまった。研究目的で別の場所にあったわずかな「酒母」を頼りに、山形県長井市にて酒造りを再開。

 そして震災からおよそ10年後──。浪江町の道の駅「道の駅なみえ」に隣接する形で「なみえの技・なりわい館」が建てられた際、その中に新たな酒蔵が作られ、晴れて浪江蔵の再建が叶(かな)った。

 そんな鈴木酒造店が新たなチャレンジに乗り出した。AIを活用して常磐もの(茨城県と福島県浜通りの沿岸海域で獲れる魚介類を指す)に合う日本酒を造っている。AIが魚の味を甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の5つに分類して数値化し、どういう味の酒と相性がいいかを導き出す。

 例えば濃い味わいの料理であれば軽めの酒を、「甘味が足りない」というAIの提案があれば、それを補完するような酒を造る。この方法により、職人の勘だけでは思いつかないような組み合わせが生まれているという。

 料理と酒の相性度は点数によって示される。90点以上だと相性度が高い。これまでの鈴木酒造店が造った日本酒の最高得点は97点で、ニンニク醤油につけて食べるカツオの刺身と相性抜群だ。

 「90点から95点に5点上げるのが大変。甘味といっても、すっきりした甘味もあれば重みのある甘味もある。単純に重い料理だから軽い甘味で、とはならない」と、代表取締役の鈴木大介氏は開発の難しさを述べた。合わせる料理の味を考え、最適なバランスを模索して造る。こうした微妙な調整には、AIの提案だけでなく職人の技術と経験も必要不可欠なのだろう。

 また、AI酒造りを進めていく中では思いがけない発見もあるという。

 「アンコウに合う酒を造った際、AIは私が合うと思っていたものと真逆の提案をしてきた。実際に合わせてみると本当にうまくて、それには驚いた」と話す。こうしたAIの提案によって着眼点が広がり、さまざまな料理と日本酒の組み合わせを知ることにもつながったようだ。

 例えばカレイの酒はキンキの煮付けとも合うし、ホッキ貝の酒はだし巻き卵や揚げだし豆腐、天ぷらにも合う。また、ユニークな発見として、焼き肉のたれと大吟醸が合うということも分かったそうだ。こうした発見はAIを活用したからこそだという。

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