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「新札」登場で現金派はどうなる? 券売機のコストがもたらす影響

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月1日 9時19分

 では、なぜ現金派は現金を好むのか。その理由として最も多いのが、「使えるお金がどのくらいあるかを把握しやすい」というものだ。実際、この項目では現金派の48%が現金を優位とし、キャッシュレス派でさえ31%が現金の利点を認めている。これは、物理的な現金の存在が予算管理に役立つと考えられている。

 また、現金には社会的なコミュニケーション媒体としての役割も残されている。お小遣いや祝い金、習い事の謝礼などでは、現金を渡すこと自体に意味を見出す消費者が多い。これらの場面でキャッシュレス化を望む消費者は3割程度にとどまった。「先生にありがとうございましたと封筒を渡すこと自体がコミュニケーション」だとインフキュリオン コンサルティングの森岡剛氏は指摘する。

 興味深いのは、キャッシュレス派でさえ、一部の場面で現金を好む傾向があることだ。給与日前後のATM利用に関する調査では、キャッシュレス派の42%が「別の口座にお金を移動させるため」にATMを利用すると回答している。これは、口座間の資金移動やチャージにおいて、現金が媒介として使われていることを示唆している。

 森岡氏は、この点について「買い物シーンをキャッシュレス化するだけではキャッシュレスは完全には進まない。自由にコストが掛からず手軽に口座間の資金移動ができることも重要」と指摘する。キャッシュレス社会の実現には、決済手段の変革だけでなく、資金移動の利便性向上も必要ということだ。

●現金取扱機器の更新遅れがキャッシュレス化を促進

 こうした意味を持つ現金は、新紙幣の発行によりどう変わっていくのだろうか。

 新紙幣発行による最大の影響は、現金取扱機器の更新の遅れにある。ATM、券売機、両替機、現金機、セルフレジなど、現金を扱う全ての機器は新紙幣に対応するための更新が必要だ。しかし、この更新は簡単ではない。この数年で現金機・セルフレジなどが広く普及し「今回の新紙幣発行は、これまでの紙幣変更と異なる社会環境で行われる」(インフキュリオンの森岡氏)からだ。

 日本自動販売システム機械工業会によると、新紙幣発行までにATMの9割以上、駅の券売機や小売店のレジの8~9割で準備が整う見通しだという。一方で、財務省の発表によると、新紙幣対応の進捗(しんちょく)は飲食店の食券機では5割程度、自動販売機は2~3割にとどまる見込みだ。

 大手企業や金融機関は、新紙幣発行に先立って対応を進めているが、中小事業者にとっては大きな負担だ。新紙幣に対応した券売機は、1台当たり約100万円のコストがかかるとも言われている。ネット上では、券売機の更新に対し国の各種補助金が活用できるような情報も流れているが、全国商工団体連合会によると、実際にはほとんど国の補助金は活用できず、負担は大きい。

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