クルマの乗り心地はもっと良くなる? カヤバのテストコースで感じた未来
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月6日 8時59分
最近のクルマはおしなべて良くできている。燃費や乗り心地、ハンドリングなどは、極端に悪いクルマなどまず見られない。それだけ技術レベルが上がり、ノウハウが蓄積されてきたことの証しだ。
だが、昨今のクルマは電動化や大型化で重くなるばかりだ。大型SUVなら2トン超えは当たり前、EVなら2.5トンを超えるものも出てきたくらいであるから、乗り心地や運動性能に影響する部品に対する要求は厳しくなるばかりである。
しかし、日本のパーツサプライヤーは日々の努力を怠らない。昨年の話ではあるのだが、ダンパーメーカーのカヤバを取材してそんな印象を確信したので、ご報告したい。
7年ぶりに訪れた工場の進歩ぶりも素晴らしいものだったが、やはり気になるのはダンパーの高性能ぶり。特に普通のクルマに使われるコンベンショナルな複筒式のダンパーが、新技術によってさらに上質な乗り味を獲得できると聞けば、がぜん興味が湧いてくるものだ。
試乗はさまざまな路面を再現した直線路とアップダウンのある周回路によって行われた。そして筆者はトヨタ・カムリで従来品と試作品の乗り味の違いに衝撃を受けた。
まるで普通のエコタイヤからプレミアムコンフォートタイヤに履き替えたのでは、と思わせるくらい乗り味が滑らかになったのだ。
通常のダンパーとタイヤでは当然伝わってくる、アスファルト舗装の路面の粒度とタイヤのトレッドパターンによって発生するロードノイズが吸収されたのだろう。ノイズや振動が格段に減少しているのだ。これならプレミアムコンフォートタイヤの出番がないのではと思ったほどだ。
●新型ピストンバルブで乗り味が大きく変化
ここまで微細な振動をコンベンショナルなダンパーが吸収できるようになるとは、ちょっと驚きだ。電動車の割合が増えていくなか、振動の発生源が減っていくと、残る振動がより気になっていく。足回りから伝わる振動がここまで減らせるのは、今後大きなアドバンテージとなりそうだ。
それを実現したのは、新開発のピストンバルブとベースバルブにあるらしい。ピストンバルブはオイルの流路を見直して抵抗を軽減しているだけでなく、さまざまな車種やグレードに合わせて特性を調整するために、セッティングの幅を広げられるよう設計変更されている。ベースバルブも同じように油路の形状を変更することで圧力損失を軽減し、減衰力の応答性を高めているそうだ。
最新のCFD(数値化シミュレーション)を使って形状の最適化を図っているのは当然だが、この20年の間にコンベンショナルなピストンは6世代もバージョンアップされている。
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