なぜ、すき家は“ディストピア容器”を提供するのか 「並盛430円」のスゴさが見えてきた
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月17日 6時0分
主要先進国は日本と違って着々と賃上げができているのは、消費税をゼロにしたわけでも積極財政をしたわけでもない。社会全体が「値上げは仕方がないこと」で、「じゃあ賃上げもしょうがない」という好循環が生まれているからだ。
東京大学 渡辺努教授の研究室で、米国や英国などにおける先進国の消費者と日本の消費者に対して「スーパーでいつも買う商品が値上がりしているのを見たときどうするか」とアンケートを行ったところ、米国や英国などの消費者は値上がりをしていても、やむなしと受け止め、高くなった商品を買うという答えが多かった。
しかし、日本の消費者は多くが、その店で買うのをやめて、元の価格で売っている別な店を探すと回答した。世界トップレベルで「安さ」に執着しているのだ。だから当然、「安さ」を売りにしている日本の外食チェーンは、世界トップレベルのコストカットを強いられる。
●「並盛430円」のスゴさ
ご存じのように、すき家をはじめとした日本の牛丼チェーンは、世界的な牛肉の需給不足により価格高騰に加えて、企業の社会的責任から「賃上げ」も加速していかなければいけない。その流れの中で、いまだに「並盛430円」という常軌を逸した「安さ」をキープしている。
これは普通に考えたらスゴいことだ。あらゆる無駄な作業、余分なコストを削って効率化を極めないと達成できない。
そんな牛丼チェーン各社が「まだここが削れたか」と手を付け始めているのが「食器洗い」である。
牛丼屋でバイトをした経験がある人ならば分かるが、食器洗いはかなりの重労働だ。ただ食器洗い機にぶち込めばいいというものではなく、丼に米がこびりつくので「浸漬槽」に浸すなど「工程」が多いのだ。こういう重労働に従業員の時間と体力が奪われるのは、経営的にも効率が悪いということで各社が試行錯誤を続けているのだ。
例えば吉野屋は2024年3月、ロボットベンチャーの「FingerVision」(フィンガービジョン、東京都江東区)と食器洗浄ロボットを共同開発して、国内約1200店舗で導入していくと発表した。もちろん、これは現場の負担軽減が目的だ。
一方、「客の善意」で従業員の負担軽減を目指すのは松屋だ。こちらでは最近、客が食べ終わった食器を返却口まで運ぶ時、食器やコップ、箸、食べ残しなどの細かい「仕分け」をする形態の店舗がある。要するに、社食のようなスタイルなのだ。
●「世界一安くて品質の良い牛丼」を食べられる日本人
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