1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

なぜ、すき家は“ディストピア容器”を提供するのか 「並盛430円」のスゴさが見えてきた

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月17日 6時0分

 このように各社が「食器」にまつわる現場の負担軽減を検討している中で、すき家の場合は「使い捨て容器」だったというわけだ。

 確かにエコの観点からは時代に逆行する取り組みではあるが、従業員は浸漬槽に食器を浸す工程もないし、食器を食洗機に並べなくてもよいし、洗い残しがないかを目視する必要もない。その作業がごそっと消えた分、調理や商品の提供にリソースを集中できる。

 こうした「安さ」と「現場負担軽減」を両立した取り組みに、企業側がどれだけ知恵を絞っているのかを少しでも理解すれば、プラ容器に盛られた牛丼を見てもそう簡単に「餌かよ」「味気ない」なんて文句は出てこないのではないか。

 食器を下げて、残飯を捨てることも、その食器を浸漬槽に浸けることも、それを取り出して食洗機に並べることも全て労働者が行う。当たり前だが、そこには全て賃金が発生する。日本人はサービスを水と同じように「タダ」だと思っているが、「きれいな食器」を客に出すのもそれなりのコストがかかっているのだ。

 そして、このように低賃金で重労働をしてくれる労働者のおかげで、われわれは「世界一安くて品質の良い牛丼」を気軽に食べられるというわけだ。

●牛丼チェーン3社の価格とアルバイト賃金を比べてみると

 この構造は牛丼チェーン3社の牛丼並盛の価格と、アルバイトの賃金を見れば分かりやすい。松屋は牛丼並盛が400円だったが、7月16日に値上げをして430円になった。すき家も430円、吉野家は468円と一番高い。

 牛肉価格が高騰しているという「ミートショック」だなんだと言っている間に、ここまで安い牛丼が食べられることは本来、異常なことだ。日本の消費者は「牛丼屋が安い牛丼を提供するのは当たり前っしょ、もっと企業努力しろよ」という感じで、この異常な低価格を当たり前のように享受しているが、そのしわ寄せは「現場」にいっているのだ。

 その一端が分かるのは、牛丼チェーン各社の東京・新宿エリアの7月16日時点の時給だ。

 パート・アルバイト採用ページを確認すると、吉野家の新宿京王モール店は「時給1400~1750円」と最も高い時給で募集をかけている。すき家の新宿南店は「時給1350~1688円」、松屋の新宿1丁目店は「時給1200円~」となっていた。

 「安い外食」をキープし続けるには原料を安く仕入れるなどのコストカットだけではなく、「現場の何か」を犠牲にしなくてはいけない、というシビアな現実があるのだ。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください