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「肉のハナマサ」は肉以外も強い “異常値販売”で乗り込む関西マーケット争奪戦

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月19日 8時0分

 JMは、ハナマサの子会社化以降も、中小スーパーのM&Aを実施しており、2023年には東京北部に13店舗を展開するスーパーみらべる(売り上げ150億円ほど)を傘下に入れた。今後、JMはこれまで以上に積極的に食品スーパーのM&Aを強化して、さらに業界で注目される存在となるだろう。

 その理由に、JMの大型加工物流センターへの投資が完了したことが挙げられる。この供給基地は売り上げ2000億円を想定した先行投資であり、これはM&Aで供給量が拡大しても十分に対応可能な規模がある。このインフラを備えた上で、JMの販売ノウハウを適用すれば、成長を加速させられるのである。

 センターを増設すればさらなる拡大もできるため、今後、JMが業界再編の核として名乗りを上げることは十分に可能だ。それこそ、業界の台風の目がまた1つ北関東に誕生した、といっていいだろう。

●ハナマサ関西進出の背景

 では、JMが乗り込んだ京阪神の食品スーパーの現状について整理しておこう。図表3は大阪、京都、兵庫で活動する主な食品スーパーの銘柄をリストアップしたものだ。このエリアは地元勢としてライフ、万代、関西フードマーケット(エイチ・ツー・オー リテイリンググループ)が、それぞれ売り上げ4000億円弱で鼎立(ていりつ)。その中で、総合スーパーを含めたイオングループ(旧マックスバリュ西日本のフジ、光洋)が推計売上6000億円超でトップクラスに位置する、といったマーケットになっている。

 加えて、昨今ではこの首都圏に次ぐ規模のマーケットを狙って他エリアからの進出も増えつつある。代表格は今、売り出し中のディスカウントスーパー・ロピアであり、すでに同地域に15店舗を出店。売り上げ600億円以上(推計値)を確保したようだ。また、滋賀の平和堂の売り上げは1200億円を超えており、中部地方の成長企業バローもすで240億円以上になっている。

 これからということでは、かつて関西スーパー争奪戦で話題となったディスカウントスーパーの王者オーケーが東大阪に関西1号店を出店。そこに、JMの尖兵としてハナマサが乗り込んでいるという構図なのである。京阪神マーケットの争奪戦は一気に過熱すること必定だ。

 JMの関西進出はこうした事情をよく理解した上での布石のように思われる。急速に競争が激化するこの地区において、地場大手と進出組が激戦を繰り広げることになれば、さきほどのリストには入っていない中小スーパーの中から脱落組が現れる。一般的には、大手スーパーは、自社の店舗スタイルに合わない企業まで再生することが難しいため、古い店舗、小さい店舗のスーパーの受け皿になりにくい。

 しかし、生鮮運営ノウハウのあるJMにとってはそこがハードルとならないため、中小の駆け込み寺となれる可能性がある。そうして一定の売上規模まで集めれば、加工センターを投入して関東でのモデルを再現できるのである。何年か先には、JMグループが中小スーパー再生工場となって、一夜城のごとく巨大加工センターをオープンする、というニュースが業界を震撼させる日がくる……そんな妄想も浮かんでくるのである。

著者プロフィール

中井彰人(なかい あきひと)

メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。

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