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なぜマネーフォワードは“祖業”を新会社に移したのか 決断の背景に「収益化」

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月19日 11時8分

 この課題に対し、マネーフォワードはさまざまな施策を講じてきた。プレミアム会員向けの有料サービスの提供、金融商品の比較・紹介サービス、さらには保険、FP/IFA相談、資産運用、新電力など、他社との協業を積極的に推進。ユーザーの「お金の課題解決」を目指し、9000億円以上のTAM(最大市場規模)を持つ事業領域で、さまざまなサービス開発と提携を進めてきた。

 しかし、こうした取り組みにもかかわらず、1610万人という圧倒的なユーザー基盤に見合う収益を上げるには至っていなかった。多くのPFMサービスが直面する「基本機能の無料提供」と「収益化」のジレンマは、マネーフォワードにとっても大きな課題であり続けた。

 この課題に対し、マネーフォワードが出した答えが、三井住友カードとの資本業務提携だったわけだ。

●「ポイントが貯まる家計簿」も

 マネーフォワードと三井住友カードの業務提携により、両社はさまざまな機能の実現を目指している。

 注目を集めたのは、PFM上で登録した複数の口座間で、ドラッグ&ドロップで資金を移動できる機能だ。これまでPFMは、口座の残高を取得する参照系APIを用いてサービスを提供してきた。口座の資金移動を可能にする更新系APIを用いたサービスが次の一歩として期待されていたが、セキュリティ面での難易度も高く、PFMでは実現に至っていない。ただし、この機能の実現には、必ずしも更新系APIを使用するとは限らず、具体的な実装方法についてはまだ明らかにされていない。

 三井住友カードの決済をリアルタイムで家計簿に取り込む機能も重要だ。これにより、ユーザーは常に最新の家計状況を把握でき、より正確な資産管理が可能になる。

 また、AIを活用したパーソナライズされたレコメンド機能の提供も計画している。ユーザーの資産状況や行動パターンを分析し、最適な金融商品や資産運用方法を提案する。例えば、家計や資産の状況から投資信託の積立とローンの繰り上げ返済のどちらがいいかをアドバイスするなど、ユーザーの財務状況に応じた具体的な提案が可能になる。

 個人向けローン機能の組み込みも目指す。ユーザーは事前に借りられる金額が分かるため、急な出費や計画的な借入れに対して柔軟に対応できるようになる。これは、マネーフォワードMEの詳細な家計データと三井住友カードの与信ノウハウを組み合わせることで実現する機能だ。

 さらに、「ポイントが貯まる家計簿」という概念も導入する。家計簿をつけること自体が三井住友グループが推進する第5の共通ポイント「Vポイント」の獲得につながり、そのポイントは三井住友カードのサービスで使用できるようになる。辻社長は、「家計簿をつけることでユーザーの資産が増えていく。そんな世界を作りたかった」としている。

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