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ドンキ、爆発的成長の裏に「まじめにふまじめ」 AI活用、商品開発、顧客重視の社風を読み解く

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月31日 6時15分

ドンキ、爆発的成長の裏に「まじめにふまじめ」 AI活用、商品開発、顧客重視の社風を読み解く

「にぎやかで楽しい」だけではない、ドンキの戦略(出所:ゲッティイメージズ)

 ドン・キホーテは今や、知らない人がいないほど日本中の人たちに利用されるチェーンとなりました。同チェーンを運営するのが、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)です。

 利用者としてしかドン・キホーテを知らない人は「にぎやかで楽しく、ありとあらゆる物がそろっているお店」という印象があるかもしれません。しかし、同社の経営は大胆な戦略と緻密(ちみつ)な数値に裏付けされています。

 そして、その精度の高い戦略と数値設計に加えて、斬新なアイデアや他の企業がためらうような強く、ストレートなメッセージ性を備えているのが特徴です。さらに詳細に見ていくと、小売業のマーケティングにおける普遍的な重要要素である「顧客視点」のヒントも潜んでいます。

 例えば、同社の企業原理には「顧客最優先主義」と書かれています。この顧客最優先主義を原理原則とした上で成り立つ戦略の成果が、次のような数値に表れています。

 2014年からの10年で売り上げは3倍、営業利益は4.2倍、時価総額にいたっては5.7倍です。さらに店舗数が2.5倍、購買客数は2.5倍、アプリ会員も3倍と驚異的な数字を達成しています。成長はまだとどまるところを知らず、2030年に向けては、現状の2倍近い営業利益目標を掲げているのも驚きです。

 今回は、他の小売業も参考にすることが多い、PPIHの象徴的な取り組みをいくつかピックアップしたいと思います。

●「マシュマロ構想」は何がすごいのか

 PPIHグループでは、テクノロジーの橋渡しを担う子会社としてマシュマロを2019年に設立しました。プライシングの最適化や消費者ニーズの分析、新たな金融サービスを構想の柱としながらプロジェクトを推進しており、ダイナミックプライシングモデルやオリジナリティあふれる顧客の声の収集だけでなく、金融事業の子会社設立を通した「majica」アプリの価値向上を実現しています。

 この「マシュマロ構想」の根幹には、テクノロジー活用を最大化するだけではなく、そこに、人間の経験と勘を付加することを忘れないという特徴があります。例えば、AIが推奨した価格と店舗の現場スタッフが設定した価格で、どちらが売り上げと利益を大きく生み出したか検証することで、精度を向上させるサイクルを実現しています。

 ダイナミックプライシングは「競合価格から安くする」といった単純な話ではなく、どのように競合店舗の価格を取得し、自社の利益率も加味しながらどこまで値引きできるか、もしくは値引きすべきかといったロジックを組み立てなくてはなりません。その際、低価格が来店要因となる商品と、価格以外の要素が来店や購買要因として強い商品を選別する必要もあります。在庫管理や店舗で常に商品別利益率を管理できるシステムも必要です。

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