最低賃金アップの波 「価格転嫁できない」中小企業はどうなる?
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年8月28日 7時30分
2024年度の最低賃金の目安が決まった
今年の春闘での賃上げに続き、第2弾ともいえる2024年度の最低賃金の目安が決まった。厚生労働省の中央最低賃金審議会は7月25日、最低賃金(最賃)を全国平均で時給50円増とすることを決めた。
いつもなら各都道府県をA、B、Cの3グループに分けた最賃額改定の目安を示すが、今年は各グループともに一律50円引き上げた。
この目安に基づいて各都道府県の最低賃金審議会で決定され、10月1日から実施される。仮に目安通りに最賃が改訂された場合、全国の加重平均は1054円となり、引き上げ率は昨年比5.0%増となる。
目安通りなら、東京都は現在の1113円から1163円になる。全国最低の岩手県も943円となり、全都道府県が900円以上となり、1000円以上が現在の8都府県から16都道府県になる。
そもそも最賃は、文字通り法律が設定した最低レベルの賃金であり、正社員・非正規に関係なく地域別最賃額以上の賃金を支払わなければ最低賃金法に違反するため、50万円以下の罰則が科される。
最賃はこれまでパート・アルバイトなど非正規社員の賃上げの役割を担ってきたが、中小企業の正社員の領域にまで影響が及ぶ。
●各都道府県、最低賃金引き上げなるか?
今後注目されるのは、都道府県の最賃が目安をどれだけ上回るかである。中央と同様に公益委員と労働者側委員、使用者側委員の3者で構成する都道府県の最低賃金審議会で具体的な金額が決まるが、昨年は目安を超える県が相次いだ。昨年の目安はAグループ41円、Bグループ40円、Cグループ39円だった。
Bグループの兵庫県はグループ内の目安を1円上回る41円、Cグループの佐賀県は国の目安を8円も上回る48円、山形県、島根県、鳥取県でも目安を7円も上回った。そのほか、青森県、大分県、熊本県、沖縄県も引き上げ、計24県が目安以上のアップを決定した。その結果、全国の加重平均は目安の1002円を超えて1004円となった。
目安以上に引き上げる背景には、隣県同士の人材獲得競争がある。例えば、佐賀県は隣の福岡県が通勤範囲であることから人材流出を危惧し、大幅な引き上げに至った。
また、台湾のTSMCの半導体工場がある熊本県の最賃は898円だが、TSMC関連企業の資材管理のアルバイトの時給は1900円、食堂の調理補助も1300円以上といわれる。今年の目安である50円を引き上げても948円。今年は隣県を巻き込んで目安以上の引き上げがあるかもしれない。
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