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最低賃金アップの波 「価格転嫁できない」中小企業はどうなる?

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年8月28日 7時30分

 一部でも価格転嫁できた企業は67.2%である。一方、「全く転嫁できない」が19.8%もあった。中でも労務費の価格転嫁については「全く転嫁できない」企業が26.1%もあった。

 コスト別の転嫁率の内訳は、原材料費は47.4%、エネルギー費は40.4%、労務費は40.0%という結果になっている。価格転嫁ができる中小企業とできない企業との二極化が進んでいる。

 前出の製造業の産業別労働組合の幹部は「大企業の経営者の中には、労務費は生産性向上という企業努力によって上げていくべきであり、価格に転嫁するようなものではないという認識がいまだにある。しかし、中小企業はこれまで乾いた雑巾を絞るような状態でやってきており、価格転嫁してもらわないと賃金は上げられないし、従業員の生活も支えきれない」と状況を振り返る。

 価格転嫁による賃上げができなければ従業員の離職リスクが高まり、人手不足倒産も現実になる。価格転嫁は労使共通の課題でもある。

 中央最低賃金審議会は今回の目安の厚生労働大臣への答申でも「独占禁止法の執行強化、下請けGメンなどを活用しつつ事業所管官庁と連携した下請法の執行強化、下請法改正の検討等を行うとともに、『労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針』の周知徹底を要望する。(中略)転嫁率が低い等の課題がある業界については、自主行動計画の策定や改定、改善策の検討を求めることを要望する」と述べている。

 答申では中小企業へのさらなる助成金などの支援の拡充も要望しているが、今後、コストアップと人材確保のための努力が中小企業に求められることになる。

●安い日本 諸外国の最低賃金事情は

 一方、諸外国に目を転じれば日本の最低賃金はいまだに低い状況にある。日本と同様にウォン安ドル高の韓国は7月12日、全国一律の最賃を1万30ウォン(約1160円)に引き上げることを決定した。東京都とほぼ同じであり、全国平均の1054円を上回る。また、今年1月時点で英国とドイツの最賃は円換算で2100円、オーストラリアは2500円に達している。

 円安とはいえ、海外との最賃格差も拡大している。東南アジア諸国の最低賃金も上がりつつあり、最賃で働く技能実習生の受け入れ国のベトナムでも日本よりも韓国、台湾に魅力を感じる人が増えているという。

 また、国内でも人手不足にもかかわらず、“安い日本”を嫌って海外で働く若者も増えるなど、非正規労働者の海外流出も懸念されている。

●著者プロフィール

溝上憲文(みぞうえ のりふみ)

ジャーナリスト。1958年生まれ。明治大学政治経済学部卒業。月刊誌、週刊誌記者などを経て独立。新聞、雑誌などで経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。『非情の常時リストラ』で日本労働ペンクラブ賞受賞。

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